『ストーカー』(2002年)★★★1/2
邦題のセンスに泣かされる傑作
監督・脚本のマーク・ロマネクが手がけた8年ぶりの次回作『わたしを離さないで』(未見)が公開された時、聴こえてきた評判が良かったので、HD放送を観てみることに。
これは傑作。
原題は『One Hour Photo』ショッピング・センターに備わっている現像コーナーの事のようです。何にしろ『ストーカー』という邦題は投げやりでセンスがない。
ロビン・ウィリアムズの芝居の確かさは相当なものですが、躁病的な本人のキャラクターからイメージされるキャスティングとそれらの作品によってあまり認知されていない印象があります。『グッド・ウィル・ハンティング』とか『ガープの世界』とかを観れば一目瞭然なんですけど。
そんなロビン・ウィリアムズのイメージを逆手に取ったような、それでいて完全に理解したキャスティングがまず凄い。何十年もニコニコと仕事をこなしつつ、写真を持ってくる美人の奥さんとその家族の写真をこっそりと自分の分までプリントして執着する孤独な主人公を完璧に演じています。
この孤独感の表現が凄まじく、ジェフ・クローネンウェスの凄み満点のカメラワークや監督の確固たる映像設計、そしてロビン・ウィリアムズの背中の芝居や佇まいなどで観るものに強烈に響いてくる。
脚本もシンプルかつスマートな構成で声高に主張しない中に、やるせなさ爆発の人物造形を浮き彫りにする。一部引っかかる部分があるものの(ステレオタイプなクソ店長が最初から敵意満点とか)、ごく些細な事だ。
個人的にはロビン・ウィリアムズ扮する主人公に終始共感し感情移入してしまいました。
これは是非監督の最新作『わたしを離さないで』も観なければ。