『サンクタム』★★★
予定調和ではあるものの、古き良き探検映画の雰囲気を堪能できる佳作
初日に行かなければならないと思って金曜の夜に観に行きました。奥さんはまったく興味がないということなので独りで。僕を入れて観客は3人ぐらいでした……。
本来なら3月に公開する予定だったのですが、震災があったせいで公開延期になっていた作品です。アメリカでの興行が散々だったというのでハードルを少し下げて観に行ったのですが、「洞窟」大好き人間としてかなり満足の行くサバイバル映画でした。
3D映画だからアトラクション風の映画をイメージしてしまいますが、意外や意外に硬派な作りをしていて、『死』と隣り合わせの『洞窟』というシチュエーションをしっかりと描いてくれます。
冒頭こそCGを使った巨大な洞窟の全景を写したり、たいして上手くもない合成でスケールを出そうとしますが、一旦洞窟に登場人物が入ってからは一切他のシーンが挿入されないところも「分かってる」
『ディセント』のような変化球でもなく、クリストファー・ハイドの傑作『大洞窟』を意識した作劇が展開します。
こちとら『川口浩探検隊』によって洞窟探検モノに関しては目が肥えていると自負している人間ですが、「洞窟モノ」ならあって欲しいと思う危機的状況が次々と襲ってくるので、ニヤニヤしてしまうぐらいです。
まあ、逆に言うと「想定内」の危機ばかりというのはちょっと残念ではあるんですが。
プロットの作りとしては往年のディザスター映画そのもので、一番近いのは『ポセイドン・アドベンチャー』でしょうか。
それというのも、舞台は洞窟になっていますが、それに加えて重要なのは、キャメロンが関わっているからなのか、「水」なのです。つまり、世にも珍しい「ケイブダイビング」のサスペンスを描いている映画でもあるのです。
ただでさえ人間が生きていていい場所ではない「洞窟」なのに、その中でさらに水責めにあうんですからたまったもんじゃない。
キャメロンお墨付きの「ちゃんとした3D映画」なので、全編殆ど違和感を感じさせない自然な3D描写が続くのと、「3Dでござい」というしゃらくさいアホなカットもまったく無いので、途中からほとんど3Dを意識しなくなります。それでも水中に潜る際の息苦しさはなかなかのモノで、水中と空気中の境界線が目前に迫る効果は絶大です。
ただ、期待していた「閉塞感」は監督の演出が平均的なものなので特に感じられなかったのは残念。
いくら照明器具を用意している設定でも、「暗黒」の怖さをもっと強調して欲しかった。映画館はその恐怖を唯一再現できる空間なのだから。
あとちょっと洞窟が広すぎる。ここももっと「行き止まり感」が欲しかった。閉所恐怖症をグイグイついてくれるような演出が足りない。
その点『ディセント』の序盤はかなりの閉所恐怖症感が味わえました(後半はアレですけど)。
それでも『洞窟』モノとしてはかなり健闘しているし、最近お目にかかれないサバイバル映画としてはかなり楽しめました。
洞窟潜水の恐怖と窒息感を厭というほど味わえる傑作。