男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『縮みゆく人間』を読みました。

時代を先取りしたフラッシュバック構成

リチャード・マシスンの長編第二作。

ずっと昔、友人の家に行く途中の古本屋さんで、軒先のワゴンに入って売られていたのを100円で購入した文庫版。

プロットは映画にもなっていたので知っていますが(この映画ってどこかで観られる機会ないのかなあ)、本編を読むのは初めてです。

マシスンの本が素晴らしいのは分かりきっているのですが、この作品の素晴らしいところはその構成。

TVシリーズの『LOST』で一躍大流行になったフラッシュバックによる作劇を、すでに抜群の演出として使い切っているのです。

「物語はできるだけ先から始めたほうがいい」

という有名なアドバイスがあるように、本編は主人公がすでに蜘蛛とかと同じ大きさになって地下室に閉じ込められ、そこでサバイバルをしているところから始まります。何という魅力的な始まり方!

そして、時には回想という方式を取りながらも、基本的には章が変わるごとに彼が「縮み」始めてからのストーリーが交錯して描かれていくのです。

地下室の生活も生命に直結した危機また危機なのですが、過去の生活もありとあらゆる「辛いこと」が主人公に降りかかってくるんです。もうサディスティックなほど「酷い目に遭う」。

この二重の苦難が交錯して描かれる構造がページを読むのを止めさせてくれません。

思えば『地球最後の男』も「吸血鬼に支配された世界」という状況から始まって、フラッシュバックのようにそこに至る経緯が描かれていたのですから、この頃のマシスンの十八番というべき構成だったのかもしれないですね。

そして、最後の最後に主人公が読者の想像の上を行く「勝利」を得るあたりは、まさにマシスン節炸裂で実に感動的でした。

デビュー作で地球規模のスケールをひとりの男を通して描いたあと、極小の空間を同じようなスケールで描いてみせたマシスンのチャレンジングな作家性には唸らされました。

素晴らしい。