『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』★★★1/2
ケヴィン・ベーコンが最高
言わずと知れた『キック・アス』のマシュー・ヴォーン監督最新作。
正直『X-MEN』には何も思い入れが無いんですが、チャールズやエリックなどのキャラクターの生い立ちや出会い、そして仲間ができていく過程がすごく丁寧に描かれていてたまりませんでした。アメコミヒーローものって結構天涯孤独だったりするので。思えば『キック・アス』もヒット・ガールが仲間を見つけて嬉しくてたまらんという話だったし、「普通ではない」人間に対するアプローチはこの作品でも大変共感できるものでした。
各々当然「普通の人間」ではないミュータントたちが、それぞれ仲間を見つけて喜びを隠しきれない描写はいちいち素晴らしくて、子供の頃のチャールズがお母さんに変身したレイブンと出会うシーンは出色。母親でない事を見抜く理由が「母はココアを作ったりしない。使用人に命じるだけだ」とか、彼がどういう境遇なのかを有機的に分からせて巧い。
「怒り」によってパワーを得るエリックが、チャールズと出会って徐々に打ち解けていく展開も抜群。ふたりで一緒に仲間を見つけて歩くモンタージュなどはテンポも良くて最高にいい気分にさせてくれる。
それが頂点に達するのが中盤の”チャールズがエリックの内面に触れる”訓練シークエンス。あそこは登場人物同様、観ている方も涙腺を強烈に刺激される名シーンで、エリックを演じたミヒャエル・ファスベンダーの名演と相まって大感動を生み出している。
監督が事前に参考にした映画が『007は二度死ぬ』(「あい……らぶ・ゆー」)だということで、ところどころファンならニヤリとせざるを得ない描写があって面白い。敵の組織が潜水艦だったり、豪華な部屋が実はその潜水艦の一室だったり、ソ連の使っているヘリだったり、クレジットのデザインだったり。
ただ、そういった「どこか呑気」な初期007シリーズを意識している割にはお話は比較的重苦しく、終盤は悲劇的な展開にもなるのが個人的には少し残念。いや、あれはあれですごくいいんだけど、だったら初期007を意識する必要性を感じない。マシュー・ヴォーンはもっと正攻法で勝負できる監督だと思うし。
『キック・アス』でも感動的なフレーズを作り出していた作曲家の一人ヘンリー・ジャックマンの音楽もかなり燃え&感動で、特訓シーンやクライマックスのバトルシーンなどの音楽はその最たる物。X-MENには特定のメイン・テーマがないからこそ自由にやれている感じ。
あと、VFXがジョン・ダイクストラってのも衝撃的で、クレジット読み間違えたのかと思った。マシュー・ヴォーンがどういう経緯で依頼したのか気になる。明らかに意識的に頼んでるよなあ。
それにしても、悪役のケヴィン・ベーコンの素晴らしさはどうしたことでしょう。もう何の「力み」も無い好演で、登場シーン全部ニヤニヤして観ていました。あれは最高のキャスティングだろう。
↑ケヴィン・ベーコン狂のおっさんを自ら嬉々として演じるケヴィン・ベーコン
やっぱりこれが出来るだけでも相当の大物ですよね。