男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『ゾンビランド』★★★1/2

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ジェシー・アイゼンバーグがいいなあ

買ったまま放置していたブルーレイで遂に観ました。これは傑作!

噂通りの『青春ゾンビ映画』として申し分ない作品の上、プラスアルファがやたらと素晴らしい。

そして、キチンと『ゾンビ』映画の大切なモチーフが散りばめられているのも重要。

1.擬似家族
ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』以降の「出来のいい」ゾンビ映画のほとんどでこのモチーフは重要な要素を果たしています。『ナイト…』は文字通り他人の一軒家に集合した擬似家族が崩壊してしまうプロットだし、『ゾンビ』もショッピングモールに籠城した擬似家族の物語だ。大好きな『28日後…』も中盤にいたるまでの展開はまさにそれだった。『ゾンビランド』はかなりそれを直接的に取り上げてセリフとしてもハッキリとそれがテーマだと明示している。そして、その家族の形成に至るプロセスそのものが映画の魅力に直結している。しかも、実に清々しくて感動的。リチャード・マシスンの『地球最後の男』と『ナイト…』はこれの表裏で成り立っていて、『地球最後の男』は家族を「喪失」している=人類の消滅がテーマ、『ナイト…』は家族が「崩壊」する=人類の人間関係の崩壊がテーマなんだと個人的に思っています。

2.ロードムービー
ゾンビ映画と言えば「籠城」がつきものですが、実はロードムービーとしての側面を持ったゾンビ物も多い。『ゾンビランド』は完璧にロードムービーとしてのスタイルを採用しており、「籠城」の要素は殆ど無い。そして、ロードムービーゾンビ映画として(終末映画と言ってもいい)重要なのは、文明の崩壊とそれとはまったく関係なく美しい自然の対比がある。『28日後…』の中盤、イギリスの田園風景が実に美しかったのを筆頭に、文明の崩壊した風景というのはすごく美しい。『ウォーキングデッド』でも静かで美しい風景がバックに描かれている。勿論対位法的にも恐怖が際立つ手法だが、『ゾンビランド』のアメリカの風景は、意図的に広大で牧歌的な大陸的美しさを活写している。長く続く一本道や、どこまでも広がる青空など。観ていて実に気持ちがいい。

3.ゾンビがちゃんと凶暴で頭部を破壊すると死ぬ
全編にわたってギャグとして登場するのが「ゾンビ映画」(ホラー映画)のお約束に対しての対処法。「後部座席を確認しろ」などなど。そして、それらがギャグとしてだけではなく、作品のペーソスとしてキチンと機能している点も重要。ところどころ本当に名言が多く、いちいち感動したりするから侮れない。


「青春コメディ」として大変良く出来ているのは言うまでもなく、ジェシー・アイゼンバーグ演じる主人公のキャラクター造形が大変良い。宣伝などで言われているような「ひきこもり」「オタク」という単純なカテゴライズでは全然なく、「一歩踏み出せない童貞」が(強制的にではあるが)能動的に他者と関わり合っていく事で成長していく、ビルドゥングスロマンとしての側面も見逃せない。

そのジェシー・アイゼンバーグをはじめとして、登場人物四人のキャスティングが恐ろしいほど見事にハマっており、ウッディ・ハレルソンも気味が悪いぐらい絶妙だし、エマ・ストーンもその妹のアヴィゲイル・ブレスリン(『サイン』の女の子がこんなに大きくなって……)も好演。88分という短い上映時間(コメディとしては適切)なのが残念なぐらい、もっと彼らと一緒に旅をし続けたいと思ってしまう。

もともとTVシリーズとして企画していたようで、そう言われてみればそっちでも実現して欲しいと思わせてくれる傑作です。


あ、あと、ビル・マーレイは最高です。これは絶対に書かなければ。