『キック・アス』コミック版レビュー
キック・アス (ShoPro Books)
マーク・ミラー ジョン・ロミータJr.
小学館集英社プロダクション 2010-11-19
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続きが読みたいなあ
いまだに暇さえあれば『キック・アス』を観ている状態なのですが、やっとこさ原作のコミックを読みました。
<ネタバレがあります>
1.映画のシナリオと同時進行で製作され、撮影開始時にはまだ3章までしかコミックは描かれていなかった。
2.キャラクター設定や後半部分が異なる。
という予備知識を持って読みました。
まず、グラフィックのカッコヨサにしびれました。映画もコミックを意識した色使いがなされていますが、こちらは独特のクールさがあります。描きこみも尋常じゃないし、構図もシネスコを意識した映画的なモノ。アメコミはあまり読んだことがありませんが、ボクのいだいているアメコミのイメージとはちょっと違いました。1コマ1コマの絵が凄いカッコイイんですよね。
キャラクター造形は、映画版にあるような軽い雰囲気はなく、かなり「病んで」る感じです。ボク個人は映画版の中学生っぽい感じが(高校生ですけど)共感できて大好きですが、このコミックならあのキャラクター造形が相応しいと思います。
ヒット・ガールやビッグダディはデザインも設定もかなり違っています。これはどっちがいい悪いではなく、全然違うので比較のしようがない。後半部分で一番大きな違いはビッグダディがギャングに楯突く理由。これは「スーパーヒーローにはヴィランが必要だから」というもの。シャマランの『アンブレイカブル』を彷彿とするひねったアイデアですが、この部分があるとないとでは根本的にテーマが異なってしまうんですよね。ボクは映画版のストレートな設定の方が大好きですが、キャラクター設定と同じ理由で、このコミックには相応しいと思います。
そして、『キック・アス』を語る上で欠かせない「暴力描写」について。映画では「暴力描写はクライマックスの大活躍を活かすため」でしたが、コミックでは徹頭徹尾「現実に対するリアリティ」のために描写されます。映画版よりも徹底的な暴力描写は、そのままギャングのビルへの殴りこみ部分でも「リアリティに対する演出」として機能しています。したがって、映画に登場する「飛行装置」も登場せず、キック・アスもヒット・ガールと共に生身で殴りこみに参戦します。
本来『キック・アス』というプロジェクトが目指している方向性としては、コミック版の方がストレートに突き進んでいるように感じます。
ただ、やっぱり映画版で得られるカタルシスは微塵もないので、ボク自身はマシュー・ヴォーン監督の判断を支持したいです。
でも、コミック版も明らかに傑作。
10月に発売開始されたという続編も読んでみたいです。