男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

午前十時の映画祭『2001年宇宙の旅』

キア・デュリア¥ 1,849 (26% OFF)
高画質を堪能できます
やっぱり名作
2010年になってしまいましたが、宇宙へのロマンは継続中
SF:13位 (2010.08.08)
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「ハルも木から落ちる」

ニュープリントで、シネスコ上映の左右黒み版で、アスペクトはちゃんと2:2.0のようです。フィルムはちょっと傷ついていたりしましたが、おおむね良好。音声はバリバリの5.1chで、迫力満点でした。序曲とインターミッションもあり、ラストは延々ドナウが流れるちゃんとしたバージョンでした。ただ、そういうもんだって知らないと、あれって劇場でいきなり真っ黒な画面でやられると戸惑いますよね。家の奥さんも上映ミスなのかとおもってハラハラしたそうです。休憩の時もかなりの人数の人がトイレに出て行ったのですが、そんなに長くない上に、別段休憩が終わる時間とかも出てこないので、戻ってきたら再開していたので大慌てで席に着く人が多かった。しかも、再開そうそうプールがポッドに襲撃されるというこの映画の数少ない見せ場の一つなのだから、かなりの台無し加減だ。ちなみに席は満席でした。


劇場の大きな画面で見ると、細かく作り込まれた特撮や、ミニチュアのダイナミズム、パンフォーカスや影と光がハッキリとした映像が思う存分楽しめる。そして、やはり大画面が大前提で構成されたレイアウトやカメラワークを脳内補完しないでも体感できるがの素晴らしい。

シンメトリーでFIX中心の画面構成に放り込まれる移動撮影や手持ち撮影のクールさが実にキューブリックらしくて燃える。


ただし、何度も観ていて慣れているとはいえ、中盤までの催眠作用は尋常ではない。もちろんこれは、作品の価値とはまったく関係がないし、それでこの作品への評価が変わるわけではないのですが、奥さんも「一生懸命がんばったけど、途中で一度気を失った」というぐらいなので、一般的な評価はやはり厳しいと思います。だって、眠ってしまったらまるっきり判断できないわけですから。やっぱり「普通に観ていられる」作品というのは、ちゃんと観客のことを考え抜いて編集なり構成なりが工夫されているのだと痛感させられます。ここはなかなか線引きが難しいのですが……(隣の男性はほとんど眠っていましたし)


(おまけ)●『2001年宇宙の旅』はどうして眠たくなるのか?


今回いろいろと考えながら観ていましたので思いつくまま列挙。

  • 風景ショットが単調に続く。

もちろん「単調」なんて書くとキューブックにしかられてしまいますが、とにかくその「間」が催眠作用があるのは明白。

  • フェードアウト処理の多用。

これも独特のスタイルを生み出しており、「神の視点」を強く意識させる素晴らしい演出なのですが、これも眠い。人間は神様じゃないので、眠気には勝てない。ただ、これが続く中でズバっとカットつなぎが入ったりするから本当に巧みに計算されているんですよねえ。

  • セリフがほとんど無い。あっても物語を進行させるモノではない。

こればっかりは「映画」が「物語」の呪縛から逃れない限り難しいのですが、映画を観に来ている人は(自分も含めてですが)やっぱり「物語」が牽引してくれると思い込んでいるんですね。自分から能動的に「作品」を楽しむという姿勢はなかなか難しい。この映画は恐ろしいほどこの「能動」さを要求してくるので、ここも厳しい。まあ、数少ない会話シーンにしても、ほとんど「物語」上意味をなしていないというのは相当凄いことだと思いますけどね。プールの両親のバースデー・ビデオ・メール全然要らないし! でも「See You Next Wednesday」があるからある意味重要か。<wikipedia(英語)>

  • ♪美しき青きドナウ


まあ、他にも要因は多々ありますが、書いてみて思ったのは、全部「キューブリック」が意図してやっていることばっかりなんですよねえ。これでは欠点とは言えない。だって、作者がそうしているんですから。当然キューブリックにしたって、わざわざ最初はつけるはずだった説明のナレーションを外しているぐらいですから、こうなることはわかっていたはずです。

そして、上記の演出や作劇が違っていたら、それはやはり『2001年宇宙の旅』ではない。

しかし、もっといえば、ほぼ同じストーリーのクラーク版『2001年宇宙の旅』(小説)娯楽性が高いし、「謎めいている」と言われる「物語」もシンプルで実に分かりやすい。

しかも、ボクは続編の『2010年』は原作も映画も大好きなので、『2001年宇宙の旅』は観るたびに色々と考えさせられるんですよね。