男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『目撃』


「人でなしめ」

WOWOWで放送中のイーストウッド特集。今回は『目撃』。イーストウッドがたまにやる「ベストセラーの映画化」です。最初に観たときは、主人公の老泥棒が隠し金庫のマジックミラー越しに殺人現場を目撃するシークエンスがすごく好きでした。延々20分ぐらい場面転換もなく状況が進行するんですよね。エロティックなシーンではイーストウッドのエロ親父ブリが健在ですし、リモコンを使われそうになるシーンの緊張感も素晴らしい。どんどん状況が悪化していく様を、ただただ「いつもの表情」で観察しているイーストウッドが実に面白くて、やっぱりイーストウッドは自分を分かってるなあと思います。


でも、


やっぱりこの映画の白眉は、空港でジーン・ハックマン演じる腑抜け大統領のスピーチを聴くシーンでしょう。


国家権力には勝てんわいとばかりにスタコラと変装して国外脱出をはかろうとするイーストウッドですが、テレビでいけしゃあしゃあと自分が殺した女の夫を慰める大統領を見るや、みるみると顔が怒ってくる。
イーストウッドのファンなら”お馴染み”の極めつけなんですが、とにかくイーストウッドの怒りに火がついた芝居は最高。
許されざる者』の酒を飲み始めるシーンもそうですし、『アルカトラズからの脱出』でジンマーマンさんにちぎれた指を突きつけるところとかもそうです。
観ている方は一様に


「まずい!!」


と、他の登場人物たちに同情すら覚えるほどびびる。それがどんな悪党でも。


まあ、だからこそその怒りが爆発して悪党を粉砕した瞬間は常にカタルシスが得られる訳で、それがマネーメイキング・スターであるイーストウッドの十八番なんですよ。


なんだかヘンテコリンなこの『目撃』ですが、役者イーストウッドを堪能できるという意味では近年貴重な映画だともいえるでしょう。だからこそ(久々に)『グラン・トリノ』では役者イーストウッドの”お馴染み”が爆発しているので、みんな大好きなんじゃないでしょうか。