男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

ゾディアック

デビッド・フィンチャー監督の最新作。
フィンチャー監督の『セブン [DVD]』以来になる得意の連続殺人鬼映画というのがふれこみであり、事前のイメージでした。ところが、今回フィンチャーは得意のアクロバティックなカメラワークなどを封印して、徹底的に抑制の効いたクールなタッチで事実のみを展開させるルポタージュ風に仕上げています。これがまあガッチリこの実話に基づく作品に合っていて、全編に緊張感がみなぎる傑作に仕上がっていました。

<以下ネタバレ>

『セブン』では直接の殺人描写はほとんど無かったのに対して、今回は前半で3つの殺人シークエンスが登場します。このシークエンスがどれもはらわたに来る強烈さで、特にやたらと天気のいい風光明媚なダム湖で行われる刺殺シーンは、ナイフを使うという痛さ抜群の凶器も相まって劇場が凍りつくほど。どのシークエンスも”実際の生き残った被害者”の証言を基にしているので、フィクションにはない妙な生々しさが炸裂しています。
最初のカップルのシークエンスではヘッドライトによって犯人の車中が見えなかったり、画面の外で急ターンする車の音が実にドキっとさせてくれたり、いよいよ登場するゾディアックがハンドライトによって絶妙に姿がハッキリしないあたりのセンスはフィンチャー節炸裂で、『セブン』のジョン・ドゥを雨の中で真っ黒に処理した演出に通じる気味の悪さです。(車の停止時間の長さも緊張感抜群)
ダム湖のシークエンスでも、ロングでヌシヌシ歩いてくるゾディアックが絶妙に判然できなかったり、木に隠れて黒ずくめの衣装に扮装するあたりも嫌になるほど気味が悪い。胸にゾディアックのマークがつけてあったりする素人臭さが特に嫌な気分になる。
あそこらあたりの殺人シーンに対する独特の空気の作り方は、持って生まれた性質が左右すると思うんですが、あれだけでもフィンチャーの闇を深く感じることができて最高でした。

加えて、中盤の警察による調査も、終盤のジェイク・ギレンホールによる調査も、それぞれ状況証拠に頼った調査が燃える燃える。筆跡鑑定や指紋などに縛られて余計に捜査が混乱しているのも皮肉っていて抜群に面白かったです。
ゾディアックがそれほど知能犯というわけでもなく、案外有力な容疑者にもたどり着いたり、最終的には恐らくそうだろうという犯人像も明示するので、ホラーというよりもミステリーとして楽しめました。

それにしても実話に基づいているというのはやっぱり力強いです。


フィンチャーとしては初めてというHDカメラによる撮影は、マイケル・マンの作品同様夜の景色が非常にクールに捉えられていますし、今回のセミ・ドキュメンタリーのようなタッチには非常に適していると思えました。

あ、あと久々に見るロバート・ダウニー・jrをはじめとして、キャストがどいつもこいつも素晴らしかったです。もうバッチリなキャスティングでした。やっぱりこういうまるで媚びてない映画っていうのは気持ちが良いです。