男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

マイナス・ゼロ (集英社文庫 141-A)

マイナス・ゼロ (集英社文庫 141-A)

マイナス・ゼロ (集英社文庫 141-A)

久しぶりに読み直しました。

懐古主義者としてはたまらない小説です。よく考えたら、本編の中での”現在”である1963年にしても今となってはかなり”過去”になっているので、ある意味二味美味しい小説ではあります。

この小説を読むと、その時その時の生活を魅力的に描く技術が凄く勉強になります。とにかく生活に密着するディティールを緻密に描くことによって読者は自分にとっての過去でなくても、その時代の生活を現在もしくは自分にとっての過去のように置換できるのだと思うのです。そういう作業を促すことで感情移入も促せるという。

また、当然のことながら魅力的なキャラクターもポイントですよね。この小説に登場するカシラと呼ばれる鳶職人の一家のなんとも魅力的なこと! ずっとこの一家と一緒に生活をしていきたいと思わせてくれます。

広瀬正のユーモアに関しても重要だと思います。客観的な視点が生み出すある意味突き放した感じが凄く面白いんですよね。本編中にも引用されるフレデリック・ブラウンの雰囲気に良く似ていて。それでいてキャラクターに対する愛着もキチンと描かれているのが凄いと思います。登場人物たちがいつでも深刻にならないというのもボクにはポイントだったりします。よく考えたら物凄く深刻な状況に陥っても、「仕方ないね」風にサラっと流れるが実に良いです。