男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

ローレライ★★★1/2

という訳で観てきました。

カラカラとシネスコ画面にスクリーンが切り替わった時にグっときました。やっぱり娯楽映画はシネスコがいい。

意外にCGがCG臭かったり、ミニチュアがミニチュア臭かったりという部分と、全体的に台詞がアニメ臭かったりするあたりのチャンネル調整が必要でしたが、ストーリーもキャラクターも骨太の熱いものを感じさせてくれて満足しました。福井晴敏の小説も根幹の部分でそういうところが目玉だったりしますから。

アニメを意識した映画ではありがちな、奇を衒いすぎたカットが浮いていたりすることもなく、広角で捉えられた幾つかの空へのあおりショットもキメとして効果を上げていると思いました。

驚いたのは役所広司。巧いのは分かりきっていたのですが、返答一つとっても抜群で、改めて凄い安心感を映画に与えるなあと思いました。樋口監督が生の役者は凄いとよく書いていますが、いきなり役所広司を使うなんて、そりゃそうだろうという感じです。

もう一つの衝撃はピエール瀧。これがかなりハマっていて重要な美味しい役どころをしっかり演じていました。顔つきも軍人顔だし、ちゃんと痩せて体つきも軍人っぽくなっていましたから大したもんです。

ギバちゃんもいつものギバちゃんでしたがそれがまた安心。副艦長らしさがよく出ていて好演だと思いました。役所広司との珍しい組み合わせですが、堂々と受け応えていたように感じました。

さて、潜水艦映画としては色々と美味しいところを寄せ集めたような印象を与えてしまう映画ですが、ローレライ・システムの映像化は小説を読んだときのイメージ通りで嬉しかったです。意外に活躍しないのと、ローレライ・システムがなくても”実力”で善戦するシークエンスがなかったのが残念だったかもしれません。秘密兵器なのでイザというときに使われるのは良いのですが、ジリ貧になってからというのはちょっと違うなあと。「そこでローレライを使うか!」的な演出が欲しかったです。

小説では前半でローレライ・システムの搭載された潜水艇を回収しにいくのがメインのプロットなのですが、映画ではこれがありません。ボクとしてはここの部分が凄く好きで燃えるので、このプロットは何とか入れてほしかったと思います。何故かというと、このプロットでは回収するまでにローレライ・システムが搭載されていない伊507の潜水艦としての活躍と艦長の実力が味わえるからです。それを経てから回収したローレライ・システムがいよいよ起動するというのが燃えるわけです。映画のように「じゃあ、ローレライ・システムを使ってみようか」ってのとは燃焼度がまったく違う。また、このプロットで少年兵折笠の登場している必要性が明示されるからです。映画ではN式潜水艇の操縦士としてしか役割がないわけですが、小説では深深度に対する適応力を先天的に持っている体質が、回収する作業に必要だからという設定があるわけです。

ただ、映画は艦長が主人公になっているので、折笠の活躍するプロット自体が省略されている判断かもしれませんが。

パウラ役の香椎由宇は思ったより良かったです。が、あの白い包帯っぽい、フィフス・エレメントの衣装のパクリみたいなのはどうかと思いましたよ。無駄なエロスは要らないし、要るならもっとオリジナリティを。

逆に潜水艦操舵全般の細かいやり取りなどはかなり燃え燃えで、潜水艦映画として一番重要な肝を外していないのはさすがでした。

一番燃えたのはいよいよアメリカ海軍の大艦隊が待ち受ける海域へ突入する直前のブリーフィング場面。海図の上に小さな箱に日本語で記されたコマを配置して作戦を検討する場面は、シーンの入り方から、三角定規を使って最短コースを割り出すショットまでダーッと処理して燃えました。*1

映画に対して小説のことを持ち出すのはあまりよくないとは思うのですが、同時進行で書かれている特殊な作品なのであえて比較すると、小説は「危機が訪れて、それを奇抜な作戦で切り抜ける」展開が常に見せ場に用意されていたのに、映画では危機的状況がクライマックスの爆雷攻撃と電源停止によって追い詰められるだけなのが残念でした。また、その危機によるタイム・リミットと艦内での対処時間に微妙な時差が生じしているのが又残念で、緊迫感が観客の生理と一致していないように感じました。*2

とまあ、文句ばっかり書いていますが、感動して燃えて楽しんだのは確かです。樋口監督の次回作にも期待です!

*1:ただ、ここも有機的に「意外な作戦」を観客に明示させればもっと知的燃えがあったと思うと残念です。

*2:原爆搭載機の離陸時間までの時間を字幕で処理するのも個人的には残念。