男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

バガボンド 20 (20)モーニングKC

待ちに待った新刊。

陶酔するほど燃えた。

井上雄彦の「バガボンド」は現在14巻からずっと宮本武蔵のライバルであり、もう一人のバガボンドであり、もう一人の主人公である佐々木小次郎の話を延々と描いている。

一部では佐々木小次郎編になってから離れていった読者もいるようですが、ボクは断然小次郎編からハマった口です。

元来井上雄彦はこのタイプの主人公を好んでいる作家だと思うのです。

出世作となった手塚賞受賞作品「楓パープル」から主人公を担っていた流川楓がまさにこういうタイプ。ただ、流川は本来少年漫画では脇役で活きるタイプなのです。それを証明したのが「スラムダンク」な訳で。

スラムダンク」の主人公桜木花道は典型的な学園漫画の主人公タイプであり、それゆえ一般の支持を大いに受けたわけです。桜木が少年漫画の主人公の資格が十分なのは、ちゃんと「練習」=「修行」するからです。流川にはそれが描かれない天才タイプなので、脇役。*1

ということで、「バガボンド」では主人公は当然宮本武蔵であり、キャラはキッチリと桜木キャラを踏襲していたきたわけです。(ストーリー自体が修行ですからね)

しかあし、

ボクは個人的には流川も大好きなのです。

なので、佐々木小次郎が登場して、あまつさえ耳が聞こえないという大胆な脚色を読んだ瞬間、キタ!!!と思ったわけです。

もう、一巻ごとになぶるように読んでいるのですが、武蔵編と比べると絵の緻密さが更に異常の極みに達していて、小次郎のスピード感を恐ろしいほどに感じさせる演出(これも『1/24秒を超える演出』に他ならない!!)や、合間に挿入される相手側の心象モードの的確さも素晴らしい。佐々木小次郎に当然のようにモノローグや主観視点が殆どないのも素晴らしい!

武蔵編が桜木と同様モノローグ全開で読者への感情移入をスムーズにしているのとはまったく正反対に、小次郎編では対する敵の側から描かれる作劇法にボクは震えが来るほど感動するのですが、そのあたりが理由で読者が離れていると思われるのが非常に悲しいのです。


なんつうか、観るほうも読むほうも甘ったれんな!とちょっとだけ本音を書いちゃいたい今日この頃です。

ダラダラと情報過多なモノもボクは絶対に否定しないが(言葉が否定的なのは勢いです)、それに慣らされていて自分の感受性を鈍らせて、作り手の信用を裏切ったらおしまいなんだよ!

*1:ちなみに、「リングにかけろ!」でも練習をしない剣崎は当然「仮にも天才」な訳で、脇役な訳です。