男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

プログラム52『ミッドナイト・クロス』をクライテリオン版ブルーレイで鑑賞しました。

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所有欲を満足させてくれる円盤

かつて、LDの時代。映画ファン(コレクター)が一度は通る「輸入盤」の世界で、誰もが憧れるパッケージを送り出していたのがアメリカのソフトメーカークライテリオン。その作品のセレクションや極めつけのクオリティを維持する画質&音質、めくるめく特典の数々。

そして、なによりも素晴らしいのは、その商品を「所有したい」と思わせるトータルのデザインセンス。数々の名盤を世に送り出しているクライテリオンは、ブルーレイの時代になっても変わらずそのスタンスを維持し続けており、21世紀になってもやはり「クライテリオン」というレーベル・ブランドの高さは揺るぎないものがあります。

今回久々にクライテリオンの商品を二枚輸入して購入したのですが、久しぶりに「これは持っておきたい!」と思わせる商品だったので、改めて「やっぱりクライテリオンはいいなあ」と俗なことをニヤニヤと思ったりする梅雨の夜であります。

まず一枚目は日本ではブルーレイ化の気配さえないブライアン・デ・パルマの傑作『ミッドナイト・クロス』

子供の頃テレビで初放送された時、中盤の「自動車事故の連続写真を掲載した雑誌から写真を切り抜いて、それをコマ撮りしたフィルムに自分の録音した音を重ね、銃声の有無を確認する」シークエンスにガツンとやられてしまったものです。今回観直しても、やはりデ・パルマがこの映画で本当にやりたかったのはあのシーンだよなあと改めて思わせるほどの興奮。よくTwitterなどでも話題にするんですが、個人的に映画のそういう「ディティールを粘着質にネチネチと描く」シーンが大大大好きなので、このシーンや『太陽を盗んだ男』の原爆製造シーン、『フレンチ・コネクション』の自動車解体シーンなどは何度観ても興奮してしまいます。もうここまでいくとフェチと言ってもいい。

このシーンがなにより素晴らしいのは、ストーリー上それほど重要ではないということです。別に連続写真を動いているようにしなくたって、一枚一枚ルーペで観ていけばマズルフラッシュぐらい発見できますし、多分その方が確実w しかし! はさみでチョキチョキ切り取って、それを一枚一枚キチンと調整して1コマずつフィルムで撮影し、サウンドテープの銃声の部分にバツ印をつけて、自動車が着水する部分にも印をつけてギュギュギュ、ギュギュギュと合わせていく。この映画でしか絶対に表現できない恍惚感がたまらないんですよ!!


子供の頃から大好きなタイトルバック。針が振れるたびにクレジットが出ていきこれから始まるドラマの要素が音で先出しされる。風の音、心拍の音、悲鳴、そして銃声の音と共に原題である『BLOW OUT』のアルファベットが1コマ単位で画面に次々と現れるや、急ブレーキの音と共にタイトルが左右からせり出してきて、「O」の文字が交錯していく。完璧!


映像の魔術師だったころのデ・パルマなので、撮影のヴィルモス・ジグモンドも大変だっただろうなあと観ている方が心配になるようなカットが続出します。序盤の事故シーンでは、集音シーンからして狂気のようなカットが続出。しかも、これらのカットはその後回想でジャックの視点からも描かれるという異常さ。カエルもフクロウもどうやって同じ場所に固定させたのか。回想シーンでは、スローモーションの映像にトラボルタの顔を合成するという実にカッコいいカットも。


当時のデ・パルマのミューズであるナンシー・アレン。この映画でも非常にチャーミングで、泣かせてくれます。


映画史上に残る花火のショット。サリーを抱きかかえるジャックの頭上に次々と華を咲かせる。円形のドリーショットはストーリー上の効果も含めて超絶的な感動を生んでいます。


今回初めてハイビジョン映像で観たことにより、今までは全く知覚されなかった「色」のこだわりが存分に堪能できました。フィルターも含めて、服の色や車、部屋のカーテンの色などなどを「赤」と「青」で徹底的に染め上げているその映像設計が実に気持ちがいい。トリミングのビデオは言うに及ばず、ノートリのDVDでもこれは全く感じることができませんでした。願わくばフィルムで一度観てみたいものです。撮影は名手ヴィルモス・ジグモンド


ううん、買ってよかった。