男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

シネスイチ板橋プログラム24『マンイーター』★★★


ワニ映画では貴重な良作

一時期はすっかり廃れたものでしたが、CGの発達とともに再び大量に作られるようになった動物襲撃映画。これは『ジョーズ』で映画ファンになった人材が前線に出てくる年代とも取れます。

先日観た『ピラニア』のオリジナル版でシナリオを執筆したのはジョン・セイルズ。彼がもう一本書いた動物襲撃映画の傑作が、言わずと知れた『アリゲーター


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「トイレに捨てられたペットのワニが下水道で巨大に育って潜んでいる」という都市伝説を元にした素晴らしい傑作。ジャングルなどに生息するはずのワニを都会のど真ん中で大暴れさせる説得力満点のシナリオと、ルイス・ティーグ監督による下水道内の照明演出やハッタリ満点のショック描写が冴え渡る。


ところが、水でも陸でもOKで、見た目も恐怖感満点の優等生であるワニは、動物襲撃映画の花形でありながら他には傑作が見当たりません。どれもこれも恐ろしくつまらない作品ばかり。

そんな中、2007年というかなり以前のオーストラリア映画がやっと日本で公開され、今回晴れてブルーレイでも発売。当時は無名だったサム・ワーシントンなどの出演者たちが有名になったということもあるようです。

予告編を観て、ふと思い返して調べてみたところ、向こうで公開した頃にも予告編に反応してブログに書いていました。ははは。

広大な国立公園を周遊する観光ボートが、救助信号を目撃したために本来入っていはいけない聖域に向かい、そこで超巨大なワニに襲われる。

序盤では空撮によって美しい国立公園の風景が描写され、静かに丁寧にワニの存在を匂わせていきます。監督が極めて「真面目」なアプローチで動物襲撃映画を作ろうとしていることがよく分かり、かなり好意的に観てしまいます。実際にワニが襲撃してくるまでも緊張感を徐々に醸成していくのがうまい。

ワニが襲ってきてからも、本体が殆ど映しだされず、背びれ部分などがチラっと見えるにとどめています。これはもちろんスピルバーグの『ジョーズ』をお手本としており、水辺の観光客が襲われるシーンも、カメラが一瞬目を離した隙にいつの間にかいなくなってしまうというスマートなもの。


河川ですが潮の満ち引きがあるらしく、逃げ延びた小島が夜には水没してしまうというタイムリミットサスペンスもなかなか巧い。

ジワジワと水が陸地を侵食していく描写など、本当に丁寧にサスペンスを積み重ねていきます。


ただ、少し残念なのは、観光客が落ち着きすぎていることでしょうか。ショック状態に陥っているとも捉えられますし、類型的なパニック描写をしないのは評価できるのですが、直ぐ間近に巨大ワニがいるという恐怖をあまり感じさせてはくれません。

ロープを使った脱出作戦や、錨を使った罠など、小島からの脱出に絞ったシナリオはタイトにまとまっているし、お約束通り失敗してしまって台無しになる部分なども非常に緊迫させてくれる。


終盤は今まで焦らし続けた超巨大ワニがいよいよ主人公の前に姿を現すわけですが、このあたりのプロットも大変工夫が施されていてかなりの緊張感が味わえます。


監督・脚本のグレッグ・マクリーンは本当にまじめに動物襲撃映画を作ろうとしており、「俺のジョーズを作ってやる」という熱を強く感じます。


あくまでも小品という映画ですが、数多ある動物襲撃映画の中では群を抜いて面白い作品であることは間違い無いです。