男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

刑事コロンボ #20野望の果て

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12分もネチネチ

いやあ、面白かったです。昔テレビで観ていたはずなのに、まるっきり(謎解きも含めて)忘れていたおかげで大いに楽しめました。いや、忘れていなくてもこのエピソードは傑作の一つじゃないでしょうかね。長尺版(98分)なのに殆ど無駄なシーンが無く(テレビではカットされていた歯医者のシーンは確かに余計ですが、あそこやたらと面白かった)、常にコロンボが犯人のミスを探りに探る展開が素晴らしいです。

白眉は選挙戦まっただ中に、犯人の事務所で展開する最初のネチネチ攻撃。巻き戻して時間みたら12分ちょっともネチネチやってましたよ。最高です。犯人役のジャッキー・クーパーが出口での最後のネチネチの前に一度カメラの方に顔を向けて披露する、”殆ど表情は変わっていないけど、視聴者の同情をこれ以上ないほど促すうんざり顔”は傑作。
とにかくコロンボのネチネチさが尋常じゃなくて、あんだけポケットの多い服装をしていながら、必要なモノは一切入っていないという徹底ぶり。
犯人が選挙戦のPR映像を撮影する場面に現れての口撃も凄まじくて、でっかい箱をわざわざもって来て
「お忙しいそうだから後で結構です」
と100%心にもない台詞を吐きながら、相手にイニシアチブを与えるあたりもえげつなさ満点。
お約束の、犯人に自信満々に解法を開陳させておいて
コロンボ「でも、その時ガソリンスタンドはガソリン切れで8時に店を閉めちゃってるんです」
犯人「(先にいえよ!!!)」
も酷すぎて爆笑。それだけならまだしも、犯人が撮影を開始した途端に奥さんにあれこれ吹き込む心理攻撃。おかげで犯人上の空になっちゃって、監督に
「なんだか視線が別のところへ行ってしまって……」
って言われる始末。

それにしてもあそこまで虱潰しに犯人のミスを洗い直すコロンボも珍しいんじゃないでしょうか。引っかけなども使わずに犯人を自滅に追い込むあたりは素晴らしかったです。

しかも、選挙戦の発表の瞬間に、ストップ・モーションで

「あなたを逮捕します」(決まった!)

あのスパっと終わらせるラストはクール過ぎます。普通「当選!」というニュースをバックに皮肉っぽく連行されていく犯人ってな感じのラストが定番だと思うんですが、決め台詞とストップ・モーションは本当にカッコイイです。

犯人役のジャッキー・クーパーはボクにとっては『スーパーマン』の編集長なんですけど、元々子役で大活躍していたなんて今回調べて初めて知りました。徹頭徹尾クールな犯人役を的確に演じて大変素晴らしかったです。

『オメガマン』の監督という、映画ファンにとってはよろしくない経歴で記憶されるボリス・セイガルも、ここでは的確で無駄のない演出を披露して見事でした。『別冊宝島 『刑事コロンボ完全捜査記録』 (別冊宝島 (1330))』にも書かれていてうなずいたのですが、エキストラがやたらとたくさん使われていて、画面の密度が凄く濃いんですよね。とてもテレビドラマとは思えない。それでいて人物の視点誘導は実に巧いという。なかなか素晴らしい仕事だと思います。

そういえば、コロンボ上着の仕立てにかかる時間を知るためだけにイチイチ自分の上着を注文するそぶりで服屋さんに行くシーンも大爆笑でした。
「吊してないんですね」
から始まって、延々無知をひけらかして従業員が辟易となるほどめんどくさい客ブリを披露。電話一本すれば済む話なのに、あそこまで爆笑シーンにするあたりもこの作品の素晴らしいところでした。