プログラム50『ポセイドン・アドベンチャー』を観ました。
ハリウッドの底力を感じさせる
『ゼロ・グラビティ』を毎日観ていると、やはりもっとも志が近いと感じるこちらが観たくなるというもの。『タワーリング・インフェルノ』はホームシアター開設初期に上映したので、こちらもいよいよシネスイチ板橋での上映です。
言わずと知ればアイーウィン・アレン・プロダクションによるパニック映画二部作の一作目。まあ、ボクにとってはスターリング・シリファントの二部作と言いたいところです。
子供の頃に観たこの二本にはとにかくあり余るほどの影響を受けており、『ジョーズ』とこの二作によってボクの映画脳は形成されたと断言できます。
そして、この二本を大人になってから観直すと、ハリウッドという映画製作工場の底力を思い知らされるんですよね。『ジョーズ』と違って、この二本の監督であるジョン・ギラーミンやロナルド・ニームっていうのは、他の映画を観ると分かるように、「そんなに大した監督じゃない」w じゃあ、アーウィン・アレンが凄いのかと言われれば、もちろん「ノー」でして。なので作品のクオリティを担っているのは、上述したようにスターリング・シリファントによる脚本の力がかなりのウェイトを占めているんですけども、ここで注目したいのはやはり「美術」「編集」「音楽」「音響」というテクニカルなパートのクオリティの高さですよね。例えば凡作中の凡作である続編の『ポセイドン・アドベンチャー2』と比べれば、そのテクニカルパートの酷さがよく分かるw そして、金をかけたらかけただけクオリティをアップしてくるこの「工場」ブリがいやというほど分かる。こればっかりはセンスの問題じゃなくて、やはり100年間最前線で映画を作り続けている技術スタッフの熟練ぶりですよね。
ハイビジョンの映像と、スクリーンで観た場合にそれが如実に現れるんです。
『ポセイドン・アドベンチャー』は美術(これは水関係のイフェクトも含めて)が素晴らしくて、地獄絵図と化した逆さまの船内が本当に細かく作りこんであるんですよ。そして、それを実にそれっぽくフィルムに定着させる撮影部や、恐怖をこれでもかと増幅させ、観客の没入をうながす「音響」ね。水のうねるような轟音とか最高過ぎて衝撃ですよ。また、水が「黒い」のがたまらなくいいんですよ。もう表面張力で黒いアメーバ生物みたいに迫ってくる描写なんか圧巻。また、これを役者ごしにちゃんと撮ったりするから驚異的ですよ。
そして、何度も何度も書いているように、「ダクト」ね!
「ダクトの出てくる映画は良い映画」という持論があるんですが、この映画のダクトは本当に良い。
あと、やっぱり役者陣が素晴らしいですよね。
ジーン・ハックマンなんか『フレンチ・コネクション』の次作ということでノリにのっているのがよくわかるし、アーネスト・ボーグナインもかなり完璧な芝居ですよね。そもそも全員が本当にあの状況においこまれてるという納得力が半端じゃ無いんですよ。ボロボロの衣装と相まって。
観ている方は完成品を観ているから不思議ではないんですけど、恐らくあの手の映画ってセットとかに入って「ヨーイ・スタート」みたいな状況にいると、「なにやってるんだ?」という気持ちになると思うんですよ。役者さんとしても。それでもあの芝居で映画の格を数段上げちゃってますからね。ほんとにすごいと思います。