男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『ファイヤーフォックス』137分版


 


『ロシア語で考えろ!』

待望の137分オリジナルノーカット版がWOWOWでハイビジョン放送されました。もちろんノートリミングのシネスコ版。DVDでは結局アメリカのケーブルテレビ用に編集された124分版しか発売されなかったのですが、マスターが作成されているということからブルーレイではちゃんと137分版で出ることでしょう。

まあ、一番最初に観た日曜洋画劇場版はもっともっとカットされていたんですけどね。

今回久しぶりに観直してみると、この映画が実はロードムービーに近いスタイルになっていることに驚きました。そして、そこが実にイーストウッドらしい。

ソ連に潜入して最新鋭ジェット機を盗み出す」

というプロットは、誤解を承知で書けば実際にはどうでもよくて(まあ、映画って実際そういうもんだったりしますが)、潜入したガントがバトンタッチのように様々な人々の手で基地に潜入するというところがポイントだと思いました。つまり、ガント自身もこの部分ではどうでもよくて、ソ連から見れば反逆者である、協力者の人たちにスポットが当てられていることが分かります。彼らの過去や事情などを最低限のスマートな説明で語らせて、彼らが私利私欲やスパイという駒としてではなく、人間の義に則ってそれぞれガントを守ってゴールのファイヤーフォックスまで送るのが実に泣かせます。

それを丁寧に描いているからこそ(映画としては地味になってしまうのですが、イーストウッドの映画は総じて地味ですから実は問題ない)、役割を果たした人たちがガントをそれぞれ見送るシーンで熱くなります。しかも、イーストウッドの演出がクールなので、ガントがそれに対して特にベタな感情を表に出さないのも良い。

首謀者の博士が、奥さんも殺されて、自分もあと少しで絶命するという瞬間に、扉からすっとヘルメットをかけたガントが現れる瞬間のクールさは最高で。ガントも言われたとおり他のことには目もくれずに作戦を忠実に実行するのがかっちょいい。

そして、いよいよファイヤーフォックスが朝焼けの中を離陸した瞬間に今まで押さえに押さえていたテーマが高らかに鳴り響き、それを絶命寸前の他の協力者が見送るシーンで感動が絶頂に達する。

後半部分のファイヤーフォックスによる空中戦などもアポジーの相変わらず気の抜けた合成などに目をつぶれば、超低空飛行によって発生する水しぶきなどの有名な演出が素晴らしい。

もちろんクライマックスの『ロシア語で考えろ』は言うまでもない。


イーストウッドのフィルモグラフィにおいては、一部のファン以外にはあまり評価されていない作品ですが、観直すとちゃんと「イーストウッド作品」になっていることが分かって嬉しかったです。


後はブルーレイで発売されるときには山田康雄さんの吹き替えが収録されればOKなんですが。