男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『ゴーンガール』★★★1/2

胸クソが悪くなるのに爽快なフィンチャー

デヴィッド・フィンチャー監督の最新作。映画史上初の6Kデジタルカメラでの撮影らしいのですが、地元のイオンシネマ板橋は多分普通の2K上映だと思われます。それでも、ソースの優秀さは画面の端々から匂い立つように感じられるので、ぜひとも高画質で上映している劇場があればもう一度観てみたいです。

本編は驚くほど先行きが全く読めないという、久々に食い入るように見続けてしまう2時間半でした。

デヴィッド・フィンチャーはビジュアリストとしての側面が評価されがちですが、ストーリーをストレスなく語るストーリーテラーとしてもかなりの腕前の持ち主なんですよね。勿論だからこそシナリオの出来に左右されるタイプなのかもしれませんが、そういうときは持ち前の豪腕演出で乗り切ってしまうテクニックもすごいですから。個人的に『ソーシャルネットワーク』から『ドラゴン・タトゥーの女』につづいて連続ホームランを当てているフィンチャーですから、「奇数はハズレ、偶数がアタリ」というフィンチャーの変なセオリーは完全に払拭されたようですね。

今作は原作者が自らシナリオを書いているようで、原作も相当面白いんだろうなあと思います。


ゴーン・ガール 上 (小学館文庫)ゴーン・ガール 下 (小学館文庫)



<以下ネタバレ>


子供の頃『魔太郎がくる!!』の『不気味な侵略者』(通称やどかり一家)を読んで以来、とにかく悪意を持った人間に対して対処の仕様がない恐怖には弱い。

今作もその系譜に属するお話で、しかも他人ではなく結婚相手が「サイコパス」でしたという、どうしようもない雁字搦め感が観ている人間を恐怖のどん底へ落としてくれます。

悪魔のいけにえ』などの連続殺人鬼も怖いのですが、ああいう恐怖とは全く質の違う怖さんなんですよねえ。

で、個人的にはあまりにも「現実的」すぎて、フィクションでまでわざわざ読んだり観たりしたくない類のストーリーではあります。実際問題いついかなるときでも身近で起こりえる(そして起こっている)事象(事件とも言えない)なので、そんなのわざわざフィクションという神聖な世界で味わいたくないというのが本音です。

そして、そこはフィンチャーなので、まあそれはそれは抜け目なく「ムカムカ」させてくれます。ソレをなくしたらフィンチャーじゃないもんねと言わんばかりにw

ただし、それでもフィンチャーが撮っていると不思議と爽快感があるんですよねえ。フィンチャーはもともと「感情移入」というものを頼りにしない作劇スタイルなので、この手のミステリー&サスペンスとすこぶる相性が良い。中盤からの失踪したはずのロザムンド・パイクが「クソ女」ぶりを遺憾なき発揮し始めてからの爽快感ときたらw

浦沢直樹の『Happy!』に竜ヶ崎蝶子っていう漫画史上一二を争うほどのビッチが登場するんですが、そいつは読んでいる間中終始漫画を破り捨てたくなる衝動をおさまらないんですよ。ところが、本編のロザムンド・パイクのキャラはそれほど不愉快ではない。


もちろんロザムンド・パイクみたいなクソ女を許せなくて不愉快で終始楽しめないという人もいると思うんですが、ボクなんかストーカー男をぶち殺して(あのシーン最高)血だらけで家に戻ってきた瞬間なんて「やったあ!」って心で喝采を上げましたもん。しかもあのシーンの演出がとにかく最高なんですよね。耳元で「このくそ女……」ってつぶやくベン・アフレックが倒れこむロザムンド・パイクをダンスのように抱きしめてしまうw


ロザムンド・パイクが逃避行中に出てくるもう一組の「クソカップル」にお金をまんまと奪われてしまう展開も非常に「悪質」でw


普通のミステリーならそいつらが出てきて、ロザムンド・パイクの悪行が表に出てしまい一件落着となるところを、奴らはソレ以降登場せずに天誅も受けない。このイライラさw


ロザムンド・パイクも異様に最高だったんですが、対するベン・アフレックのキャスティングがこれまた絶妙。

特にあのアホ面を効果的に使った演出の数々。カメラを向けられて思わず「学園スター気取りの笑顔」を作ってしまうあたりとか、世論を味方につけるためにテレビで魅せる薄っぺらいハンサム面に大笑い。フィンチャーのギャグ・センスが冴え渡る。それにしてもアカデミー賞だのなんだのとクリエイティブな側面でもてはやされ始めた途端に、こういう「自分の持っているイメージ」を臆面もなく有効活用したり、バットマンになってみたりと、ベン・アフレックの素性の良い頭の良さがたまりませんね。「おお、俺達のベン・アフレックだ!」って感じですよまったく。浮気相手の学生巨乳女を必死に追い返そうとしつつも、服を脱ぎ始めたら結局ヤっちゃうあたりの素晴らしさと説得力ねw 「ヤったらすぐ帰るんだよ。はぁはぁ」ってww



いやあ、ホント面白かったですよ。


カップルで観に行くことを強くオススメしたいw