男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

プログラム34『崖っぷちの男』★★★

良心のある小品

近年稀なイカす邦題で公開された本作。公開時にも良い評判を聞いていたので楽しみにしていました。

予想通りサービス精神満点の作品に仕上がっていて満足度の高い鑑賞になりました。僕は全然評価していませんが、なぜか今だにコリン・ファースの代表作のような扱いを受けている『フォーン・ブース』のように、シチュエーションを限定したサスペンスなのですが、それよりはスパイク・リーの『インサイドマン』や、『交渉人』に近いルックスの作品です。

ただ、上記の映画と比べて僕がこの映画に愛着を感じるのは、登場人物たちの関係や、それぞれのキャラクターの描き方に対しての愛情の深さでしょうか。逆にこういった作品の肝であるサスペンス部分は若干弱くなっているようにも感じたのが残念ではあります。せっかくビルの庇という高所を舞台にしているのに、ほとんどそれが活かされないのは勿体無い。

それにしてもサム・ワーシントンはどうしてこうも華がないんでしょうかねえ。

キャラクターとしても損な役回りですし。

転じて脇役のキャラたちは役者も含めてそれぞれ際立っていて非常に楽しめました。チョイ役なのかと思わせて……のウィリアム・サドラーや、観客の視点をしっかりと守って安心感を与えてくれる説得役のマーサーを演じるエリザベス・バンクスも味わい深い芝居をみせてくれました。中でも一番の儲け役はサイドストーリーの要である主人公の弟の彼女を演じたジェネシス・ロドリゲスでしょう。終始軽口を叩いたりして彼氏である弟をからかいつつ、名作の条件であるダクトに入るときは閉所恐怖症でビビるなど、見た目も含めて大変キュートに演じて大変楽しませてくれます。

クライマックスはハリウッドの典型のようにちょっととっちらかった印象を受けるのですが、肝心要の所でちょっと驚かせてくれるシーンもあり、あそこはちょっとヤラれました。

監督のアスガー・レスという人もケレン味は少ないものの丁寧な演出をしており、一瞬サム・ワーシントンが視線を動かすと老警官が独りだけキチンとそっちを見たり、エド・ハリス演じる悪役が抜け目なくダイヤが本物かどうか確認する描写を入れたり、油断なく観客の疑問を塗りつぶす演出をしていて嬉しい。


実に気持ちのいい後味も含めてオススメできる作品です。