男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

シネスイチ板橋プログラム4『ラブ・アゲイン』★★★1/2


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ソウルメイト

シネスイチ板橋初となる新作上映。つまり最初に観る映画をいきなりホームシアターで観るという試み。もちろんこれから観る映画はホームシアターでの鑑賞が主になるでしょうけど、今までの映写からして初見でも充分鑑賞に耐えうると判断しました。結果的に劇場での初見に近い感覚が味わえたので、これは誠によろしい。

今回は評判の良かった『ラブ・アゲイン

ロマンチック・コメディのジャンルに属する映画ですが、シネマスコープサイズだったのでそれも決め手になりました。

ダン・フォーゲルマンの書いたシナリオは、複数の恋の行方を交錯させつつ意外な展開を盛り込んだりと飽きさせないし、なにより「心の伴侶(ソウルメイト)」についての物語である部分に大変好感がもてました。キーになるプレイボーイのナンパ男ジェイコブの存在が、巧みに物語のテーマを明確にしている。演じているのは売れっ子のライアン・ゴズリングで、僕は初ライアン・ゴズリングがこの映画になりました。説得力のありすぎるボディ&魅力は「売れっ子」になるのも分かる。

『フィリップ君を愛している』を監督した二人組、グレン・フィカーラジョン・レクアはしっとりとした大人のトーンを維持しつつ、10代の恋と20代の恋、そして40代の恋とそれぞれを対等に扱った演出がスマート。個人的に「年上萌え」のツボを突かれる主人公の息子ロビーとベビーシッターのジェシカに関するエピソードは、ずっと心のなかで応援していました。


アンドリュー・ダンによる大人びたルックスのカメラ


ベビーシッターのジェシカが主人公に想いを寄せているのをセリフではなく映像で表現する。

今作ではある程度ベタではあるけれども、カメラワークやサウンドイフェクトによって丁寧に感情表現をしており、ゲタゲタ笑うタイプのコメディとは一線を画している。


スローモーションでピザを食べるライアン・ゴズリングに爆笑。

冴えない中年をやらせたら右に出る奴はいないであろうスティーブ・カレル*1に「モテる技術」を伝道するライアン・ゴズリング。このスローモーションのショットは爆笑。


常に名前を間違えられる、どうでもいい間男を本当に「どうでもいい」と思わせる絶品の芝居でみせるケヴィン・ベーコン

常に引っ張りだこという印象のケヴィン・ベーコン。どの映画でも完璧にそのキャラクターをわきまえた芝居で盤石の存在感を発揮するが、この映画でも出てきただけで「どうでもいい奴」だなと全観客に納得させる気の抜け方は素晴らしい。全人類を滅ぼそうとするヴィランを演じていようが、どうでもいい奴を演じていようが、特にこれといった役作りめいた物を感じさせないあたり、真の名優だけに許された凄みだ。


サウナルームでの爆笑シーン。「20分も目の前でブラブラさせているのに不快にも思わないなんてどうかしてるぞ?」


ベビーシッターのジェシカを魅力的に演じているアナリー・ティプトン

大人たちの恋愛模様の中で、40代の年上の主人公とその息子との間で板挟みになる17歳の女の子。これだけでご飯がおかわりできるエピソードだ。まさか自分の父親に相手が惚れているとも知らずに、一途な愛情でジェシカにアタックしまくるロビーの不屈の精神は涙なくしては見られない。しかも告白するキッカケが○○ニーを見られたってんだから同情せずにはいられない。


保護者相談会で教室の外に座る主人公と妻を演じるジュリアン・ムーアシネスコの画面を使って離れて座る二人の距離感や、望遠によるアウトフォーカスの背景も余白がたっぷりで美しい。

ジュリアン・ムーアはうっかり浮気をしてしまって家庭崩壊の引き金になるわけだが、存在そのものが適役すぎて、キャスティングの巧さを感じる。この映画はどのキャラクターもキャスティングが素晴らしい。
「ひとりで『トワイライト』を観に行ったのよ……。最低だった」と孤独を訴えるジュリアン・ムーアが哀愁二重丸。


フォトショップで加工済みなの?」とエマ・ストーンに衝撃を与える、ライアン・ゴズリングの笑ってしまうぐらい完璧なボディ。


『ゾディアック』を観たら二度とは忘れられないジョン・キャロル・リンチ(どうでもいいけど、この人からジェシカが生まれるとは思えないw)。


シネスコの画面に横一列で座る男たち。こういう構図は文句なしに笑えます。


・・・

エマ・ストーンの出ている映画に外れなしというジンクスがありますが、この映画もその例に漏れず彼女が意外な絡み方をしてきて驚かされます。あれはなかなか巧い作り。エマ・ストーン自体も実はそうだったんだというキャラクターに強力な説得力がありますし、「話をしてて和む」という性格もバッチリです。

それにしても「マジックテープの音のする財布」ってどうしてあんなに忌み嫌われるんでしょう?


作品自体が、アメリカで新興宗教同様に食い物にされるであろう「モテるためのハウトゥ」に振り回される男を茶化しているわけですが、「自信を持つことは大事」ってあたりは肯定しているのは大事。まあ、そこんところがあるからこそセックス伝道師たちの食いっぱぐれがないとも言えますが。

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とにかく笑えるという意味では文句なしに面白い一冊。ですが、決してまじめに受け取らないこと。まあ、女性に入れ込み過ぎて失恋ばかりしてしまう男性は一読の価値はあると思いますが。「恋愛を深刻に捉えるな」という教えは間違っていないと思います。

*1:ウィリアム・H・メイシーは人間として究極に冴えないので並べられない。