男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

変ドラ再録『旨ドラ』

百年後のおかし!


あまりにも大全集の『ドラえもん』3巻が面白過ぎたので、名作『自動販売タイムマシン』収録を記念して(どんな記念だよ)、拙サイト『変ドラ』から”旨ドラ”を再録したいと思います。

UMA旨ドラDORA

「本当に旨い、ドラえもん


ドラえもんの魅力の一つに、「食べ物が本当に美味しそう」と言うのがあります。

食べ物が美味しそうに見えるのは、とにかくF氏の並々ならぬ漫画力の成せる技で、とにかくありとあらゆるドラえもん読者に、子供の頃から強烈な「味覚体験」を刷り込ませていると言えるでしょう。

今回はそんな魅惑のドラえもんまんぷく世界を味わってください。

(*ほぼ確実にお腹が空くので、読んだ後にご飯を用意しておくか、お菓子をつまみながら読むことをお奨めします!)


さて、ドラえもんの数々の旨そポイントは大きく3つのカテゴリーに分けられます。

  • 旨そうな連想系
  • 旨そうな現物系
  • 旨そうな食いっぷり系

です。

まずは《旨そうな連想系》からコレ



↑要するにそのものの描写は無いのだが、この丸井マリになったのび太の旨そうな言い方! 人差し指と握り拳はお約束として、舌なめずりとウィンク。そして何より「しるかけごはん!」と言う余りにも 庶民的なセレクトがもう。


F氏の旨そセレクトは絶妙で、「食べてみたい」物と「実際旨い」物が、かなり日常的というか普遍性があって、そこら辺りもいわゆる「日常性の中の・・」と言う部分をガッチリと演出する手段となっている。


まあ、そんな理屈などどうでも良いほど旨そうなのが次のコレ




パンの木ですよ、パンの木。「のび太漂流記」からですが、のび太は漂流したり遭難したりすると、いつも旨そうな食べ物を食べます。このパンの木(実だろう正確には?)も、ドラえもんが助け船でこっそりと木に付けておいてくれたのをむさぼり食べる訳ですが、その前のお腹が空いている描写が素晴らしいので、口いっぱいにパンの味が拡がってきます。

食べてる部分は、実際には「食いっぷり系」なんですが、Mr.食いっぷりののび太には、まだまだこんなもんじゃないモノがありまくるので、こちらに持ってきました。
あくまでもパンの実が旨そうと言うことで。



続いてドラえもん読者の相当数が憧れまくるコレ

↑つぼやき! ドラえもん世界では海の幸と言えばサザエなどの貝類。スネ夫の自慢から始まる一連の海の幸願望の到達点とも言えるこいつは、子供達の永遠の垂涎の的。

ここで強烈におかしいのが、ガスコンロのホースがドラえもんのポケットからのびてる所。やけに細かい演出が旨そさ倍増。


結構この手の話のバリエーション は、取りに行く行程自体に話の主題が行くのだが、この話では思う存分旨そ描写が炸裂していて、すこぶる読者の胃袋を刺激してくれる。
しかもモノがモノだけに、買ってくればいいという訳ではないところが辛すぎて、やっぱり「海の底」で(ははは)焼いて食べるってのが素晴らしいわけです。いやはや堪りません。

大体の人がそうだったと思うんですが、これを読んでいた頃は、サザエの壺焼きなんて食べたこと無かったですけどね。



つづいて、今度は食べた後の描写で旨そうなのがコレ

↑全部「上」。店屋物のどんぶりのふた加減とか割り箸加減、桶寿司のバレンの旨そさ。どれをとっても出前モノの旨そさを堪能できる逸品。お茶とかおしぼりの上って何だよ。


とにかく電話で注文するシーンからして旨そさ抜群なんで、本編も必読の「わすれトンカチ」ですが、店屋物と言えば「温泉旅行」でとる出前も絵自体はそうでもないんですが、状況的に旨そレベル高し。



こちらも相当なコレ

↑ポイントはハムですよハム。子供の頃はトムとジェリー七面鳥と、この紐で巻かれたブリブリのハムをむさぼり食いたかったモンです(実際に正月に贈り物のコレをむさぼり食ったときの感激は忘れない)。ここでの旨そポイントはもう一つあって、あの笹包みです。中身はなんだったのかは想像するしかないのですが、逆にそれが何とも「食ったな」って感じが凄くて高ポイント。

どくさいスイッチで開き直ったのび太による欲望三昧ですが、子供心に「これはこれでいいじゃない」と思った経験あるでしょ? 自分はある。(今でもちょっとある)
でもあれは電気が消えちゃうと言うすんごいイヤな展開になるので、やっぱりイヤだった。
でもこの子供の食欲願望全開の満願全席はやっぱり完璧だと思う。缶詰系も子供心にそそるアイテム。ほら、ケーキなんてのび太手を付けてないもんね。(いや、ケーキも旨そうだけども)



次は2の現物系とダブのですが、橋渡しの意味も込めて、ドラ焼き三部作。



先ずは夢のようなコレ

↑実際にコレ、ドラえもんの夢なんですけど、大皿に台詞の通り「山のような」ドラ焼きが盛られていて、破壊的に旨そう。山というよりチャーハンみたいな盛り加減ですが、一つ一つの描き込みが流石の旨そさです。


↑こちらは夢と言うよりも空想なんですが、こちらは山盛りは山盛りでも、一つ一つのドラ焼きがバカでかい。でかさと量の両方を求める飽くなきドラえもんのドラ焼き願望が素晴らしい。ドラえもんの昇天面もポイント高し。


その願望が悪夢と化すのが、忘れちゃ行けないコレ

↑ご存じドラや菌から生まれた、バイバインに匹敵する化け物アイテム。しかし、このむくむく描写が素晴らしく旨そうで、どうやったらこんなに柔らかそうであまそうな食べ物が描けるんでしょうね。F氏の画力に改めて脱帽。


・・・



と言うわけで、連想するだけで旨そうなドラえもんグルメワールドですが、次ぎに実際に旨そうな現物そのものを描いた

《旨そうな現物系》

に行きましょう。


先ずはドラ焼きに匹敵する、ドラえもんの最初の好物がコレ

↑良いコゲ加減ですハイ。これは喧嘩になって当然の旨そさ。笑顔ののび太が持つお餅が微妙に巨大なのが食欲そそります。ドラえもんののばし方も絶妙の餅っぷり。


こんな旨そうな餅を奇数で出すなんて、何考えているんでしょうかママは。さすがプリン一つしかおやつにださなかったりする人だけはあります。
まあ、考え方を変えると、シビアにドラえもんを居候扱いしているともとれますがね。(家族の数間違えて卒倒したりするし)


変則的に道具そのものが旨そうな場合も多々あって、個人的にコレ

↑いいあんばいにテカってまさあ。集中線が通常の三倍は激しいのも、旨そさの証明。F氏も昭和一桁だけに和菓子に関しては絶対的な自信がありますね。まんじゅうって凄い道具だよしかし。

「桃太郎印のきびだんご」も人間が食べたっていいんだと「宇宙ターザン」の時に言ってますが、このまんじゅうも道具としては勿体ないほどの旨そさなので、案の定二人とも食べてます。


ですが、こちらは道具史上最も倫理的にまずいコレ

↑ 捨て犬だんご! 残酷な道具ですよコレは。ペットが戻ってこれなくなるなんてリアルに非道すぎる。旨そうなのがかえって残酷さを煽る。こんなもん部屋のまん中においておくなよドラえもん。でも、球体加減が地域名物の「ホールインワンまんじゅう」や「カモメの卵」を彷彿として激旨そ感高し。


そして、何とも言えない味あるコレ

↑未来の紙工作は食べられちゃうんですが、ロールケーキが旨そう。ケーキが下の銀紙も含めて旨そうなのを分かり切った素晴らしい工作。

これに関しては食いっぷりも含めての旨そさだからフライングでコレ

↑擬音がちゃんと紙の音なのに、何故か凄く旨そうなのがF氏マジック。ドラえもんビリビリいわせて食べてます。すんごく旨いオブラードの高級な感じなんでしょうか。全然想像も付かない描写です。人間の想像力の範疇を越えてなおかつ旨そうなマジック。


そして、仲間内でも怖さと共に旨そさでも一二を争うのがコレ

↑ご存じバイバインによる、無限地獄の始まり。しっかしこのくりまんじゅうのテカりかたは尋常でない旨そ感。もう日本中の読者に「後一つぐらい食え!」「うわああ、俺が食ってやる!」と声を大にして言わせ続ける傑作中の傑作ですが、旨そ描写の一つにジャイアンの「からだじゅうがあまったるくなった」って名台詞があるんで、そういった部分にも周到に説得力抜群なのが恐ろしい。


F氏はアイスやかき氷なんかも抜群で、実に冷たそうなコレ

↑でもコレ腹こわしますよ実際。牛一等分ぐらいはあるアイスクリーム。とは言ってもあの半溶けの感じが自分の好みにぴったりで、羨ましい限り。


次はちょっとヤバいんですがコレ

↑この後の描写も含めてヤバすぎるオチの前フリなんですが、匂い立つ旨そさ描写と、スネ夫の目の感じが猛烈にカニバリズム入ってて激ヤバです。気分は完璧に異色短編「ミノタウロスの皿」ですな。それにしてもジャイアン旨そおお。


↑”この後の描写”


・・・


さて、最後は食欲増大間違いなしの

《旨そうな食いっぷり系》


食べ物の用意、大丈夫ですか? 相当キますよコレ



↑観てる方が「がまんできない」極まる。旨そ過ぎ。「うまいっ!」と言う時ののび太の仰天目や膨れたほっぺ、満足し過ぎのドラの口や、貪るときののび太のへの字目、よだれダラダラの舌だしウィンクなど、全てが完璧な旨そっぷり。食いっぷり王のび太の面目躍如。「ないや」ってのがいい。

これ子供の頃は勝手に焼きそばだと思っていたんですが、フォークで食べているのでスパゲッティなんですよね。焼きそばが大好きなので勝手にそう解釈したのですが、2コマ目で思いっきり巻いて食べてますよのび太


のび太の食いっぷりはまだまだこんなもんじゃなくて、同じ話で立て続けによだれモノのコレ

↑「ジャイアン・シチュー」はホントにポイント高いですよ。こんな食べ方されたらそりゃあ満足でしょうよ。ジャイアン目を白黒させてます。旨そ擬音のオンパレード。「モリモリ」が最高。

中身を先に知っているのに(タクアンとか無茶苦茶)、どうしようもなく「食べてええ」と思わせてしまうのだから、相当なもんでしょうコレは。


続いては和菓子シリーズのコレ

↑ おはぎです。実はおはぎも食べたことなくて*1、未だに自分の頭の中ではこの想像上の旨そさしか存在しないと言う恐ろしさ。なのに、おはぎときくと条件反射的に「旨そおおお」と思ってしまう罪作りな漫画だ。ここでも食いっぷり王のオヤジとしてのプライドを守った素晴らしい激賞ブリ。頭のアンテナが笑わせる。


おはぎ2

↑男の憧れの極み。一人暮らし=コレですよ。布団の中で寝ながらおはぎ。もう、おはぎって何なのよ! 五郎さんたまらん旨そさ食い。これだけの食いっぷりにホント「かたいこというな」ですよ。うわああ、ごっつぉさん。


ちょっとここで模範的な食いっぷりであるコレ

↑これはかなり後期に描かれている「のび太ブラックホール」の食いっぷりなんですが、口のまわりのつぶや、互い違いの目の点などからも評価できる食いっぷりです。


んが、


初期のコレと較べてどうでしょう。

↑ 明らかに旨そさが違うでしょ。カッ食らってます。コレはありがたみわかり機で食べ物のありがたさを痛感している物語上の流れがあるからなのと、何と言っても「おつゆ」です。子供心に「おつゆがあったまったから」と言うママの台詞と、質素すぎるオカズにたまらない食欲をかき立てられたモンです。ご飯は豪華なら旨そな訳じゃない。



続いてまたもやFマジックのコレ

↑ 何故に旨そう? 板チョコが草を食んでるだけですよコレ。どこに旨そポイントがあるのか分析に悩むところですが、実際コレを旨そうだと思う人間が自分以外にもいることが判明しているだけに、謎の多いミステリー旨そ。多分あの板チョコの曲がり具合と、ここには無いけど草が缶詰に入っているのがポイントだとおもうのですがどうでしょう?


そしてラーメン

ブルートレインの時も書いたのだが、子供の頃は夜食とかを食べるのに憧れた。夜更かし願望もかなりあり、その願望充足を思いっきりネタにした「夜の世界の王さまだ」より抜粋。

寝ているママにラーメンを作らせると言う状況が素晴らしく旨そう。
それを寝ぼけたママにまんまと食べられてしまうのだが、ここでの旨そポイントは二つ。
ラーメンのチューと言う擬音と、皿に置かれたコショウ瓶。実に旨そうなだけにのび太の「あれっ?」が哀れだ。

まんが道」でもラーメンの旨そ描写は出色物なので、両氏共に相当のラーメン好きとみるがいかがだろう。

確かF氏はかなりのインスタント・ラーメン好きと聞いているが、ここら辺の描写力を観る限り先ず間違いないと思われる。


その証拠がコレ

↑ 個人的な嗜好の話になって申し訳ないが、コレが子供の頃にあまりにも旨そうに見えてしまったので、長らく(今でもだが)伸びたカップ麺や、ラーメンが好きなのです。厳密に言うとちょっと冷めたラーメンが好きなのです。カップ麺は伸びると水分を吸って麺がかなり膨張し、冷めているのでズルズル勢いよく食べられるのが、実に食ってる感が味わえるんですな。

同好の士は全然未だに居ないんですが、広い宇宙のドラえもんファンの中には、意図甲斐の無い人間もいるはずで、これを観て「旨そう」と思ってしまう者も居るはず。
・・・居ないか。


実は連想系なんですが、さすが食いっぷり王のび太のコレ

↑手に連想のハズのドラ焼きが描かれちゃってるのが演出ミス的に減点ですが、モノもないのにこれだけの食いっぷりを見せてくれると言う点でやはり外せない。

ちなみにモノはコレ

↑まあ、こんな旨そうなモノがあればあの食いっぷりも納得。ドラえもんのキョトン面が相変わらず良いですねえ。




さあ、いよいよ終盤にさしかかってきた旨ドラですが、いよいよ真打ち登場の食いっぷりがコレ

 

↑出ましたシャクシャク! 最高級メロンを食べると言えばこの擬音しかない! 美辞麗句を尽くしたメロン賛歌をコレ以上ないほど盛りたてる素晴らしい傑作擬音。ドラえもんの旨そ面も、のび太の舌なめずりもパーフェクト! 「さわやかな歯ごたえ」ってどういう歯ごたえか知らないけど、こんなにもメロンと言う食べ物を旨そうに活写し得た表現方法があっただろうか。
いや無い!


もう、とにかくシャクシャクですよ。



ああ、「おすそわけガム」 夢の道具の一つですね。
スネ夫の「味がうすいような気がするなあ。いつもの1/3ぐらい。」って具体的すぎる感想も大好きですね。
ドラえもんのび太も結局1/3の旨さで、あれだけの素晴らしく絶品な食いっぷりを見せてくれるわけで、最高のコンビですよ。



そして、いよいよ一番好きな食いっぷりであり、旨ドラの頂上対決であるコレ

きんつば! 食べたこと無いんですよコレも。はははは。でももうダメ堪りません。よだれダラダラもんですコレ。「こ、このきんつばのうまいこと。」って台詞だけで知っている人間はパブロフの犬状態です。

ネタ的にも下手な宣伝より、ホントに旨そな食いっぷりの方がよっぽど宣伝効果があるという人間心理をズバリ貫く名編なんですが、それもこれも成立させるにはこの場面の食いっぷりが絶対に旨そうでなければ行けないわけです。
それをこうも見事に成功させちゃってるのは、流石F氏と言わざるを得ないですね。

あまたあるグルメ漫画なんて足元にも及びませんよこの食いっぷりに較べたら。



そして、そういったご託云々を蹴散らすトドメがコレ!!!


↑キました「最高級フランスケーキ」!!! もう段違いの旨そさ! くううう、表情とポーズと集中線だけですよポイントは。それでこの強烈な旨そさ。要点のみの台詞も素晴らし過ぎ。食いっぷりとかのレベルじゃないですよコレ。集中線が激しすぎて、後光さしちゃってます。もう至高の旨そさです。高みに達してるなあ。あああ、食べてええ最高級フランスケーキ。

でも、フランスケーキって何なんでしょう?


さあ、異様な長さになってしまった今回の「旨ドラ」ですが、おおとりはやっぱりコレ

全世界のドラえもんグルメファンの心に今なお残る夢のお菓子。

のび太の涙の食いっぷりも含めて、究極の旨そさでしょう。何せ「百年後」ですから。何時の時代でも百年後は永遠に訪れないわけですよ。ですから、このお菓子はいつまで経っても食せない。まさに夢のお菓子。

そりゃ「ジーンと心にしみるあじ」でしょうねえ。

完璧に入れ物勝ちなんですが、あの光り輝くお菓子描写は比類無き素晴らしさ。

23万円持っていたら絶対に買いますよ。

いや、買わないかも。

 
ああ、お腹空いた。


と言うわけで『旨ドラ』いかがだったでしょうか?


ちなみに「最高級フランスケーキ」の原典である『ラッキーガン』は第二巻に収録されています。「最高級フランスケーキ」の実体もちゃんと描かれています(ただのケーキですけどね。ははは)。


ドラえもん 1 (藤子・F・不二雄大全集) ドラえもん 2 (藤子・F・不二雄大全集) ドラえもん 3 (藤子・F・不二雄大全集)