男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

ダニー・ザ・ドッグ★★★

リュック・ベッソンは色んな意味で只者ではないと思っていましたが、今回ぐらいそれを如実に体感できたことはないです。

最重要部分は後で書くとして。


リュック・ベッソンは「キス・オブ・ザ・ドラゴン」でもジェット・リーを結構巧く使っていたと思いますが、今回の”高利貸しに雇われた番犬”と言うコードぎりぎり感は素晴らしいです。しかも、オリジナルのアイデアジェット・リー自身と言うのも面白い。

首輪を外されると敵に襲い掛かるように調教されているジェット扮するダニーは、子供の頃に飼われ初めたので知能がそこら辺りでとまっており、何もしなくてもナチュラルに少年野球部に居てもおかしくないジェットはアテ書きならではのフィットぶり。

今回は殺人犬として調教されていることを踏まえた、えげつなさ炸裂のダーティーファイトを展開するのですが、アクション監督のユエン・ウーピンもまた新たな新機軸を打ち出しているように感じました。喧嘩の常套手段であるリーダー格をとにかくボゴボゴにして敵グループの戦意をくじく戦法が*1、ボゴボゴのリアルなサウンド・イフェクトと相まって燃えます。勿論周りの連中も容赦なく骨を折りまくって行動不能にもっていく辺りもいいです。

そして、後述する空前絶後ひょんなことで、飼い主の呪縛から逃れたダニーは、依然知り合った盲目のピアニストの家に転がり込み、家族同然に接してもらう。そこの娘(血は繋がっていない)も全く疑問符ナシの献身ブリでダニーと親交を深め、ダニーが家族愛と共に人間性を取り戻していくんですが、運命のいたずらで再びダニーは飼い主の下へ戻り、地下格闘技場で大バトル。

バトル→愛→笑い→バトル→愛→バトル→音楽

という感じで、水と油ほども溶けにくい要素を常にミキサーで攪拌し続ける独特すぎる作風は(やめると分離する)、滅多に感じられない感覚が観ている間中身体を支配し続けます。

それなのに、俺だって盲目のピアニストぐらいできるぜと言う貫禄のモーガン・フリーマンや、その娘の可憐さや、ジェットの適役ぶりで、結構というかかなり楽しめてしまう辺りがベッソン・マジック。

クライマックスで突然現れる、着物なのか胴着なのかおしゃれなのか、かなり判断に苦しむ敵との戦いは、家庭用トイレの中と言う極限の密閉空間で繰り広げられてマジ燃えます。どうやったらあんな蹴りや打撃が放てるのか。愛を知ってもえげつない殺人攻撃が身体にしみこんだダニーがいいです。

完全にコメディとして機能しているボブ・ホプキンス演じる飼い主の高利貸しは、劇中何度も死の淵から蘇ってはダニーに執着するアレな雰囲気抜群の面白さが炸裂してますが、終盤に愛を知ったダニーですらブっち切れてのボゴボゴ攻撃で宙を舞いまくるあたりはさすがに笑いが止まりませんでした。監督良いセンスしてます。


さて、

この映画は上記のようにコメディとしてもカンフー映画としてもRay映画としても萌え映画としても色々と楽しめるハイ・ミックスな映画ですが、ボクがどうしてもここに書いておかねばならないことがあります。

ダニーが飼い主の呪縛から逃れる突如と言うにはあまりにも突如過ぎる、ひょんなトラック衝突シーンです。

一仕事終えてご満悦の飼い主が車の中でダニーにご褒美をあげようと言いはじめ、ダニーは窓の外を仏頂面で見続けたまま「ピアノほしい」と繰り返すんですが、まあご主人様はご機嫌がいいので、馬鹿にしつつも

「今日はなんて素晴らしい日だろう!」

快哉をあげます。

次の瞬間、突如湧いて出たトラックにダニーたちの車は横殴りに吹っ飛ばされるやそのまま路肩をブチ越えてぺっちゃんこに!(わはははは)
すると辺りから武装集団が現れて車に雨あられとマシンガンの弾丸をぶち込みまくり、颯爽と去っていく。生死の確認を怠っていることを観客が疑問に思わぬほどの徹底的な殺戮。

ダニーが生き残るのはご都合主義とは言え主人公なのだからわかるのですが、結局その車に居た人間は全員ほぼ無傷で生き延びるのです。

もっとも、ボクがいいたいのは、「ダニーが飼い主の呪縛から逃れる」と言うプロットに対して、この大クラッシュ・シーンは常軌を逸した効果を上げすぎていると言う点です。他に幾らでもやりようがあると思うのですが、敢えてここまでやってしまう監督とリュック・ベッソンが好きです。大好きです。
あの「いったい何事?」感は大抵ではなく、呆然そして爆笑。

しかも、そのトラックの度肝抜きまくりの湧き出しかたときたら、『ファイナル・デストネーション』の有名なバス・シーンに匹敵します。あの映画ではその衝撃はキチンと意味を成していたのに対して、こちらでのあまりにも無意味な衝撃性はとにかく爆笑です。その必要性皆無感は「ジョーブラックによろしく」の宙を舞うブラピにも匹敵します。

加えて一本の映画で再度飼い主の呪縛から逃れると言う無茶な展開が後半にあるのですが、開き直ったかのように再度交通事故! しかもまたまた全員生きている! ここらあたりは完全にコメディとなっているので笑っても誰も責めないのでしょうが、通常映画を観に来る観客の予測を覆すことが果たして必要な映画なのかと言う疑問はいつまでも消えないあたりが凄いです。ハリウッドナイズされたと思われがちなベッソンですが、ちゃっかりとゴダールを生んだ脱構築的な血が脈々と流れていると感じさせる、ちょっと重要な意味合いをもつ映画なのかもしれません。

とにかくあのシークエンスは爆笑しました。あはははは。

*1:ホーリーランド」によれば、複数の敵を相手にするときは弱い奴からとにかくやっつけていくようですが。