男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『殿、利息でござる!』★★★1/2

不意打ちのように浴びせられる感動の嵐

イオンシネマ板橋スクリーン9>

中村義洋監督といえばたったの4ヶ月前に『残穢』という傑作を世に送り出したばかりなのに、次なる今作もド傑作だったのには驚きを隠せません。イーストウッドスピルバーグじゃないんだからw

思えば『残穢』が定番化した「Jホラー」というジャンルに風穴を開けるような「まっとうな作品」だったように、今作の『殿、利息でござる!』も近年定着しつつある「ポップなコメディ時代劇」でありつつ、極めて「まっとうな娯楽作品」になっていますね。まあ、その定着しつつある「ポップなコメディ時代劇」を一本も観ていないので、その方向の言及は避けますが(ただ、どれもこれも評判はいいですよね)。

先ほど予告編も観ましたし、キャストやポスターアートなどからも分かるように、本編も「軽妙なマイナー路線系コメディ」としてのルックスをキチンと守りつつ、クライマックスに開陳される「ある仕掛け」から生み出される「高潔な精神」=「学問の尊さ」に不意打ちのように号泣させられました。

いや、冒頭の演出で手の内はある程度明かされているので不意打ちというわけでもないんですが、山崎努妻夫木聡のキャスティングによって絶妙に不安を持続させるあたりは見事と言わざるを得ません。


日頃「特別テーマとかストーリーはレビューで語るべき物じゃない」というスタンスでいるわけですが、さすがに今作の「高潔なテーマ」には個人的な好みにハマりすぎて。

まあ、単純に「憎まれ役が実は……」というプロットに弱いだけなんですがw


美術や衣装や撮影が「軽妙さ」を損なわないギリギリのリアリティでやったらしっかりしているのも大満足ですし、安川午朗のジャジーな音楽も「泣き」になりそうなパートでグイっとコメディタッチに引き戻す効果的なものでした。

なによりもキャスティングがよろしい。

愛してやまない竹内結子さんも相変わらずチャーミングですし、サービスシーンである阿部サダヲとのロマンスシーンもドキドキさせながら笑わせてくれます。

阿部サダヲは「出オチ」感をキチンと抑えてストレートに主人公を熱演しています。W主人公と言っていい瑛太もコミカルな雰囲気をキッチリと受け持ちつつ、締めるところは締めてくれます。

基本的に善人しか出てこない作品の中、一人で憎まれ役を一手に引き受ける松田龍平が実によろしくて。父親譲りの「目つきだけで心底肝が冷える」存在感を巧みに活かしつつ、コミカルな味付けもキッチリと笑いにできるあたりはもう邦画界に無くてはならないユニークさではないでしょうか。


加えて、明らかに客寄せパンダとしか思えないフィギュアスケート金メダリスト羽生結弦さん。公開前から宣伝されまくっていて、「洋画のタレント吹き替え」どころではない誰得感を発散させまくっていたわけですが、これがまあそうと知らなければ「よくもこんな殿様感あふれる若造みつけたな!」とビックリするようなハマりぶり。まあ、そこまでいうと褒め過ぎですが、満を持して登場する「殿」としてはコレ以上は望めない存在感だったのではないでしょうか。


中村義洋監督自身も意識的に「商業作家」と自負しているフシがあるように、この作品も「後世に残る作品」にはならないかもしれませんが、少なくとも「まあたこんなの作ってなにやってんだろうな……」という邦画に対する偏見(わたし自身もそれをなかなか無くせない)を抜きにして観てもらいたい映画だと思います。


観た後気持ちよくなる映画をお望みなら、強く強くオススメします!


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