男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『デアデビル』全13話鑑賞

やっぱりヒーローは試用期間が好き

サム・ライミの『スパイダーマン』1作目を観た時に思ったのは、「前半のコスチュームが手作りの方が断然面白い」ってことでした。


このダサさ! その前の一生懸命スケッチしたり工作計画をモンタージュするシークエンスがたまらないんですよ。

おりにふれ書いているように、『アイアンマン』も1作目のマーク1製造過程がダントツで大好きです。

つまり、ヒーローがシンボルとして「スーツ」を着込んでからよりも、殆ど市民から認知されていなくて、「なんか怪しい奴」って感じの頃が個人的には一番好きなのです。

で、今回巷で話題のNetflixの一ヶ月お試しに登録したところ、これまた話題のNetflixオリジナルコンテンツになるという『デアデビル』を全話一気に観ちゃいました。このデアデビルがまた黒ずくめの服に黒い頭巾だけというなんともしびれるスタイルで戦い続けるんですよw

VODというオンライン配信によるサービスなので、「毎週一話ずつ」という旧態然としたシステムではなく、当然1シーズン一挙配信。

なので、とにかくドラマは一気に観たがる性質としてはたまらない鑑賞システムでした。


Netflixオリジナルコンテンツということから分かるように、恐らくこのサービスでのみ鑑賞できる作品なので、クリエイター側も「一気に観られる」ことを前提にシナリオを構成しているようです。

なので、アメリカのドラマによくあるマーケティング重視によるシナリオの路線変更やキャスティングの不自然な出入りが全く感じられないのも個人的に評価が高かったです。

とは言え、テレビドラマで培ってきたクリフハンガーによる「引き」や散りばめられて回収しない謎や、思わせぶりな伏線などなどもちゃんと挿入されているあたりは抜け目がないといえるでしょうか。実際一話ごとの「引き」には常に感心させられましたし(次の回での安直な解決も含めてw)。

実は微妙に一話ごとの時間に数分の違いがあるのも配信ならではのフレキシブルさだと思いましたし、余計な「前回のあらすじ」が無いのも視聴体験として1ランク上なものを提供していると感じさせられます。思うに配信前提というドラマだと、各話の時間を極端に変動させるという冒険もできそうですよね。10分でいきなり終わるエピソードとかあってもインパクトあるでしょうし、次のエピソードを分岐式にして視聴者に委ねるなんてのも面白そう。視点を変えた2話を同時に配信することで公平を期すこともできるし。


さて、本編のデアデビル。わたしはベンの映画版も未見なので、「盲目の弁護士が超感覚を身につけて悪と戦う」というプロットしか知らなかったんですけども、『アベンジャーズ』のニューヨーク崩壊後の世界を舞台にしているとはいえ、フィクションラインは極めてリアリスティックで、映画でいうと『ウィンター・ソルジャー』の方向性によっているようです。次作の『シビル・ウォー』が『アベンジャーズ2.5』とか噂されているようですから、そういう意味でもマーベルの映像作品の一つの方向性に準拠しているのは確かなようです。

そして、わたしは個人的にそういう路線が大好物なので、格闘アクションのソリッドさも含めて全編大興奮して観られました。

ヴィランとでもいうべきボスが最近やたらと目にする「微笑むデブ」ことヴィンセント・ドノフリオなのも高ポイント。あのこちらの期待に見事に応える巨漢を武器にちゃんと戦うのも素晴らしい。フレが言っていた「悪役にしか使えない【突進】を攻撃にを使う」のも最高。

そのボスの右腕ともいうべきウェスリーというキャラも非常に面白くて、紳士然とした態度が鼻につくいけ好かないゲス野郎としてヘイトを一身に集めながら、作中でのボスとの忠実な関係や、部下に対する思いやりや礼儀正しい態度など、「実は本当に紳士」だったというキャラ設定にビックリさせられる。しかもちゃんと最後の最後までやることはゲスという神業。こういうのを儲け役というのでしょうが、演じるトビー・レナード・ムーアという役者も完璧と言っていい顔キャスティングに負けない芝居で魅力を振りまいていました。

キャスティングといえば事件記者のベンを演じるヴォンディ・カーティス=ホール(長いよw)も、文句のつけようがない配役でした。個人的には『ダイ・ハード2』のテロリストとして記憶している、顔面力が非常に高い役者さん。今作でもその顔面力は作中随一だと思います。いつ死んでもおかしくない不安感が立ち居振る舞いからにじみ出ているタイトロープさは特筆モノ。


4Kカメラで撮影され、対応テレビでは4Kネイティブで再生できるということから、映像のクオリティが異常に高く、ナイトシーンの自然光による極めて美しい撮影も見事でした。4Kテレビを買って観てみたいと思わせるクオリティ。

原案としてクレジットされ、脚本も書いているドリュー・ゴダードは『キャビン』でジョスと一緒に脚本監督をやり、『クローバーフィールド』の脚本も書いている才人で、続くシリーズでもぜひ続投してほしいと思います。


アメリカは現在VODが主流になっているようで、日本でもこれらのサービスが定着することで、有料放送によるCMの排除やマーケティングに左右されないとんがった作品が生まれてきて欲しいもんです。