男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『ゴーストバスターズ』を観ました。

1984年の年末を懐古して

1984年は春子が上京した年でもありますが、ボクにとっては『魔宮の伝説』や『ゴーストバスターズ』が公開した年ですよ。『魔宮の伝説』なんかは珍しく夏休みに日米ほぼ同時公開だったのですが、こちらの『ゴーストバスターズ』は当時のお約束通り「お正月映画」として待たされたもんです。とはいっても、当時はそれほど情報が入ってくるわけでもなく、ロードショーぐらいしか情報源がなかった中学一年生の田舎者にとっては例のシンボルマークと(それが日米で左右逆であるという豆知識とか)、有名なレイ・パーカーjrの主題歌ぐらいしか事前の情報はありませんでした。なので「超期待」というわけでもなく、どちらかというと1984年年末の『3G対決』では『グレムリン』の方に期待していたぐらいです(あ、もちろん『グレムリン』は期待を上回るほどメチャ面白かったです)。

それでも、やはり公開日の翌日の日曜日に行った映画館は超満員。公開が近づいてくると宣伝攻勢がすごくて、あの主題歌もシンボルマークも巷に溢れかえっていたんですよね。

椅子に座れなくて通路に座って観たのも懐かしい思い出です。

そして、これがもうぶっちぎりで面白かったんですよ。

コメディとしても当時のアメリカ映画特有の無理矢理感が殆ど無くて、普遍性のあるいい塩梅のギャグが続出して場内がオオウケなんですよね。思うにビル・マーレイのユーモアって当時も今も結構独特だったと思うんですよ。ボクの大好きな「本人は絶対に笑わないですっとぼけている」系。それでも、やはりシナリオの構成が巧みなのか、アイヴァン・ライトマンが上手いのか、すべてのギャグで笑いが起きていましたもんね。あの有名な「すっこんでろ。オレは科学者だ」でも大笑い。

さらに、ボクが痺れたのは、コメディにありがちな「作られた感」が殆ど感じられないところでした。もちろんこれは初見時にハッキリと感じたわけではなくて、後で何度も観直しているうちに分かったんですが、ロケーション撮影にしろ、ニューヨークの風景にしろ、あのおんぼろビルにしろ、バスターズたちのヨレヨレのスーツ(そしてでかいバックパック=未許可の原子力エネルギーwっw)にしろ、美術のウェザリングや作り込み、ラズロ・コヴァックスによるリアリティ溢れるショットの数々が素晴らしいんですよ。今観ても当時にしてもあからさまな合成で飛び回るゴーストたち光線などが世界観から乖離していなんですよね。

要するに『ゴーストバスターズ』の世界がキッチリ構築されているので、クライマックスからの「黙示録」の世界に立ち向かうという信じられないような大風呂敷が、やたらと説得力満点に感じられるんですよ。『ブルース・ブラザーズ』のように州兵が出動したりする描写も抜かりなく挿入されるなか、すきあらばギャグが放り込まれてくるんですから、あの「天秤」のさじ加減の見事さは唖然とするほどです。多分ビル・マーレイとか殆どアドリブっぽいのにも関わらず。

ボクの大好きなシーンの一つに、いよいよ世界の終わりが近づいてきているというクライマックス直前のプロット・ポイントとして挿入される「バスターズモービルの中でダン・アイクロイドとアーニー・ハドソンが黙示録について話すシーン」があるんです。素晴らしい空撮によって夜の橋を走る車のショットから始まって、車内の二人が訥々と世界の終わりについて会話をする。挿入されるエルマー・バーンスタインの音楽も絶妙に雰囲気を支えていますし、「音楽でも聴こう」とダン・アイクロイドがカーラジオをつけてからの歌も最高。ビル・マーレイやシガーニー・ウィーバーを中心軸にして進んでいたストーリーの中で、エアポケットのように挿入されるのこのシーンの効果は絶大で、あそこからコメディ作品から一転して(実際にはずっとコメディなんですけど)、SFとしてのレベルがグンと跳ね上がるんですよ。観ている方も「何かが起きようとしている」のを感じながらも、「動いているけど止まっている車の中」の二人と同様に具体的な実感がまるでないという、なんとも言えず静謐な絶望感が漂うんですな。


それを踏まえての有名過ぎるマシュマロマンの登場が俄然盛り上がる。あのマシュマロマンのシークエンスは特撮的にも『3G対決』の残った一本である『ゴジラ』を軽々蹴散らすようなクオリティの高さで、ビルの間からチラチラっと見えるショットからして明らかにレベルが桁違いなんですよね。「うおおお!!!!」っていう。ダン・アイクロイドの「マシュマロマンだ」のセリフからのワイドショットに現れるマシュマロマンとか場内大盛り上がりで。

幕切れも鮮やかで、唐突に美味しいところを全部持っていくアーニー・ハドソンがキメ台詞「ニューヨーク最高!」を叫んでからの、あの主題歌とエンドクレジット。そして車に乗って去っていくのと入れ違いにゴーストが画面にガーンで暗転という美しさ。ハリウッド映画の素晴らしいところが全編に充満しつつ、この作品のみが持つオンリーワンな魅力もたっぷりという奇跡のような傑作だと思います。


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当時聴きまくったサントラ。80年代らしく歌ものアルバムになっちゃってますが、本編でも魅力的に使われているのでいうことありません。


ただし、あまりにも上記のサントラが有名になってしまったので見過ごされがちですが、エルマー・バーンスタインによるオリジナル・スコアがとにかく素晴らしいんですよ。CDも限定盤しか出ていないのが哀しい。