男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『ジャージー・ボーイズ』★★★★

近年稀な気持ちの良い映画

近くの劇場で終了する一日前にやっと観に行ってきました。

いやあ、イーストウッドごめんなさいと。初日に行っておくべき映画でした。これからいくら褒めてももう終演しているので、ブルーレイになった時にでも是非。

音楽を題材にしている映画ということでもないんでしょうが、イーストウッドの「シーンとシーンが有機的に絶え間なく連なっていく」演出は観ていて本当に気持ちがいい。当然意識してやっていると思うんですが、次のシーンへのブリッジが「観客の生理」に則って、シナリオの段階から繋ぎ目がほとんど意識されないように構成されているんですよね。片腕ともいうべき編集のジョエル・コックスの腕が冴え渡っています(いや、常に冴え渡っているんですけど)。

イーストウッドの監督作品を観るということは「ジョエル・コックスの編集作品」を観ることとほぼ同義なので、この映画の成功(商業的には駄目だったらしいですけど……)もジョエル・コックス抜きには考えられないですよね。とはいえ、ジョエル・コックス自身もイーストウッドの好みというか方向性を理解して編集しているわけですから、やっぱりイーストウッドの力だと思いますけど。

イーストウッドとしては初のデジタルカメラでの撮影だったそうですが、色が薄くなった淡いタッチと、影が多用された陰影はキッチリと再現されていますよね。シネマスコープアスペクトも当然見事に使われていてやはり気持ちがいい。

また、これも当然のように美術が素晴らしい。60年代のアメリカの背景なんて実際には知りもしないのですが、ディティールのしっかりしている美術はソファのテカリからでも伝わってきます。個人的にスタジオのスピーカーなんかもすごく気になったりw

・・・

出ている役者さんたちはみんな当たり前のようにいいんですけど、やっぱり個人的にクリストファー・ウォーケンが出てくるとたまらないものがありますね。世話好きで頼りになるマフィアのボスなんて類型的なキャラなのに、あそこまで憎めなくて頼りになるのはやはりウォーケンならではですし、キチンとラストで躍らせるあたりも憎い。



何度も「当たり前」「当然」と書いているように、もうほんと「サラっ」という感じの肩の力が抜けきったような雰囲気でこんな傑作を作っちゃうのが驚愕といいますか。イーストウッドっていうのは作家性と商業性を見事に兼ね備えた「職業監督」の頂点だなあという思いを新たにしました。


激オススメです。