男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

プログラム56『キャリー』(2013年版)★★★1/2

ジュリアン・ムーアに適材適所の意味を思い知らされる

キャストが発表された時、クロエのファンとしては喜ばしい反面、「クロエにキャリーなんてできるの?」という不安でした。「まともじゃない親を持つ子ども」を演じさせたら古今東西トップクラスの業績を誇るクロエとはいえ、オリジナルのシシー・スペイセクのハマり具合は「異常」なんてレベルじゃないだけに。まあ、この不安は半分的中しましたが、原作では「実は綺麗な子」という設定のキャリーなので、そういう意味では結構ハマっていました。加えて、自分が超能力を身につけていると分かってからの小躍り感はやはり実年齢に則したティーンエイジャーのクロエに軍配があがります。『クロニクル』同様、若い頃に超能力を持つというのは子どもの大いなる夢ですからね。

そして、キャストのもう一人として、狂信的なキリスト教信者のお母さんを演じるのがジュリアン・ムーアだと知った瞬間、奥さんと二人で「ソレはすごい」と狂喜しました。



このラスボス感!!


オリジナルのパイパー・ローリーも相当凄まじかったですが、ジュリアン・ムーアの納得感といいますか、逆によくもこんな母親の元でまともに育ったもんだとキャリーを褒め称えたくなるほでした。『キャリー』という作品の魅力は「いじめられっ子が超能力を身につけて周りの人間を皆殺しにする」という子どもの負の夢を大爆発させてくれるカタルシスにあるんですが、この母親の存在と関係が非常に大きな説得力を与えているんですよね。今回の映画版ではオリジナルよりもその部分がキチンと描写されていて、原作に近づいていると思います。

デ・パルマ版も原作も大好きな人間としては、正直観る前の期待感は殆ど無く、「クロエのアイドル映画として楽しめればいいや」という感じでした。

ところが、映画としても非常に丁寧な作りで、特に赤みがかった映像などの撮影も大変不気味で効果的なのも好印象。そもそもクロエがちゃんと可愛いし、ボクの大好きな「オドオド」ブリを全編貫いているのでたまりませんでしたよ。


バレーボールのシーンを水球にしたのは結構いいアイデア。ムッチムチになった思春期特有の肉体を晒してくれるクロエが可愛い。


超能力に目覚めて、キャッキャと小さく喜びながら調べるクロエ。分かる分かるという楽しいシーン。後半どん底に叩き落とされるのが分かっているだけに、哀しさを引き立たせる。

ネットで動画を調べたりするのが現代風ですが、本編では時代を感じさせる物は極力出さない方向性のようでした。原作やオリジナルが70年代というのもありますが、やはりキャリーの世界観にはこの方がいい気がしますね。


稲光の中に浮かぶジュリアン・ムーア。帰りが遅いと庭でフラフラ待ってる!! 恐ろしすぎるだろ!


ジュリアン・ムーアがクロエに「どうせこないでしょ」とやっかみ半分の恨み言を背後から呟いている恐ろしい図。メイクをして安定の綺麗さになったクロエが素敵。


ジュリアン・ムーア演じる母親マーガレットは、「当時の彼氏に犯されてあんたが生まれた」というセリフでの説明が到底信じられないという恐ろしさが漂っているんですよね。絶対に「こいつ自分の都合のいいように記憶を捻じ曲げてる」と思わせる。しかも、完全にそれを信じ込んでいるから、「聞く耳を持たない」「言っても無駄」「触ると火傷する」などなどの「この手の」人間をそこにいるだけで表現しちゃってますよね。これぞキャスティングの凄みといいますか。


原作通りとは行かないまでも、行く先々で町がめちゃめちゃになってしまうクライマックス。こうでなくっちゃな!


『キャリー』が最高なのはいじめをした人間のみならず、「町」全体を壊滅させるところだからね。


スローモーションでフロントガラスに顔面をめり込ませて断末魔を迎える首謀者のクソ女。


観客が全員怒りを覚えるクソ女に然るべき報いが訪れるのは観ていて清々しい。


怒りの念力発動で、降りかかった豚の血が滴り上がっていくなどの描写も結構燃えさせてくれますし、プロム会場を念動力で一掃してく様はなかなか爽快。とはいえ、やはりデ・パルマ版の開いた口が塞がらないようなような美しさすら感じさせる阿鼻叫喚には及ばないのは残念。まあ、比べるようなもんでもないですけど。


ブルーレイには「もう一つのラスト」というのがついており、こちらのバージョンで観たのですが、完全に大好きな『モンスター・パニック』と同じパターンで嬉しくなりましたね。作品世界とは完全に乖離していて、いかにも取ってつけたような感じなのも同じw じゃあ、オリジナルのラストはどうなのかというと、これまたちょっと虚仮威しじみたチャチさだったので、ボクとしては往年のホラー映画を思い出させる「もう一つのラスト」の方がダントツでよかったですね。


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言わずと知れたキングのデビュー作。いよいよ始まるクライマックスへの焦らしの部分が最高。