男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

トム・ハンクスの底力『キャプテン・フィリップス』★★★★

グリーングラスはこうでなくっちゃ!

前作『グリーンゾーン』が個人的にがっかりだった、ポール・グリーングラス監督。

正直今回の『キャプテン・フィリップス』もあまり期待していませんでした。

ところが!!!!

僕らのグリーングラスが帰ってきました。

「海賊に襲われたタンカーの船長フィリップスは、そのまま人質に取られてしまう……」

お話はそれだけ。


ところが、グリーングラスの手にかかれば、全編手に汗握るスリラーに早変わり。


そう。グリーングラス監督は、ストーリーテラーではなく、シチュエーションテラーだったのです。つまりお話を物語るのではなく、状況を物語る。それこそがグリーングラスの真骨頂。

その手腕にこそ長けた監督だったからこそ、『ユナイテッド93』のような悪魔的な傑作を作り出すことが出来たのですね。

というわけで、今回の『キャプテン・フィリップス

その「緊迫した状況」を、グリーングラスが思う存分腕をふるって調理してくれました。

<以下ネタバレ>


この映画は二部構成になっています。

第一部は海賊に襲われたタンカーを舞台にした、船員と海賊との籠城戦。人質に取られまいとする船員が海賊から隠れながらの、知力を尽くしたその攻防。あの手この手の「その手があった!」を、ボーン・シリーズで培った「最小限度の描写」で状況を描写し、観客に高次元な興奮を与えてきます。

それだけもかなりの満足度が味わえるのですが、なんとこの映画は後半の第二部で人質に取られた艦長と海賊を乗せた小さな脱出艇を中心に、アメリカ軍を巻き込んでの大スケールの攻防戦に雪崩れ込んでくれるんですね!

これは燃えるなという方が無理な相談。

アメリカ軍が誇る特殊部隊SEALsが空港に集まってくる描写、そしてパラシュート降下してくるソリッドな演出。まさかミニタリー好きに直撃とも言える軍事作戦にまで発展するとは思ってもいませんから、観ている方は震えが止まりません。

しかも、クライマックスは3つの標的を同時に洋上で狙撃するという極限の展開に発展。


この辺りの視点の交錯や状況整理の上手さはとにかく異常。それをグリーングラスの最大の武器である「臨場感あふれ過ぎる演出」で徹底的に描くんですからたまりません。

盟友ジョン・パウエルから音楽をバトンタッチしたヘンリー・ジャックマンの緊迫感あふれる音楽も燃えまくり。

そしてお馴染みの編集クリストファー・ラウズも徹底的に無駄を省いた観客の生理に挑戦しまくるエッジの効いたカッティングを炸裂させる。

しかし、ボクが観ていて一番驚いたのは、ラストのトム・ハンクスの芝居。

そこまでは、当然トム・ハンクスだから上手なのは想定の範囲内なんですよ。ところが、救出されたトム・ハンクスが手当を受けながらパニック状態から回復していきつつ、徐々に感情がコントロール不能になっていくさまは圧巻でした。よくぞあんな芝居できるなと。

そして、当たり前のように映画は余計なエピローグなどはなくブツっと終わる。

素晴らしい作品でした。


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言わずもがなの傑作トリロジーグリーングラスは続編二本を担当し、誇張でも何でもなくアクション映画を根底から改革した。

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航空パニック映画史上孤高の傑作。あまりの緊迫感に喉がカラカラになること請け合い。