男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『ザ・レイド』★★★1/2

予告を観た時からずっと観たかった作品です。

11月1日の映画の日に有楽町まで観に行きました。アクション映画ファンの間では話題騒然ですが、当然のように世間では黙殺状態で公開規模も極小。

とは言え、そこは映画の日でもありますし、2時の回だというのに7割ぐらいは埋まっていたのではないでしょうか。


ほとんどが男性!


冒頭、主人公の青年が朝早く起きだすと、黙々と格闘技のトレーニング。そして身重の奥さんに「行ってくる」と挨拶。警察の装備を身につけた主人公が家を出る時、年老いた男性に「必ず連れ戻す」と宣言。

そこでバアアアンとタイトル。

これだけで血液が沸騰する。

世間でよく言われているような「全編アクションばかりでストーリーはほとんどない」というのは間違い。

実際には、主人公にキチンとした貫通目的が存在し、アクションとアクションの間には緊張感溢れるサスペンスシーンも効果的に挿入される。しかも、「意外な展開」がキチンと主人公の目的と関連付けられたフックとしてストーリーに絡んでくる。

結論から言うと、極めて真っ当なアクション映画。

ただ、もう、通常のアクション映画なら2〜3分で終わるアクションが、20から30分続く。

これにはただただ恐れ入る。

しかも、アクションは序盤の大銃撃戦のあとはひたすらシラットという格闘技を用いた集団格闘に絞られているのだから、その無茶さは察して余りある。

正直体がこわばり過ぎて観終わったあとは非常に疲れてしまうし、登場人物たちの体力の損耗が物語の進行と一致していないという苦々しさもあるのだが、とにかくそのシラットによる格闘アクションが強烈過ぎて、あまりそういう欠点は「言うだけ野暮」という気もしてくる。

構成もなかなか優れていて、いわゆる「死亡遊戯アプローチ」とも言える「ステージを次々にクリアしていく」プロットかと思わせておいて、実際には上に行ったり下に行ったり、隠れたり登ったり落っこちたりとアップダウンが激しくて単調さを回避している。特に目玉であるシラットの格闘アクションが開始されまでの焦らしが秀逸。武装した警察官たちなので、中盤までは激しい銃撃戦が展開される。それが意外といっては失礼だが、凡百のハリウッドアクションが束になっても勝てないほどの迫力なのだ。特に音響効果とガンエフェクトが恐ろしいほどに冴え渡っている。ビルという閉鎖空間の反響音を硬質に再現し、敵も味方も常にフルオートで連射しまくる重量感のある描写は必見必聴の強烈さ。

この銃撃戦の秀逸さが、中盤でいよいよ銃器の無くなってしまった主人公の披露するシラットに必然性をもたせている。廊下という閉所を効果的に使った一体多数のまさに殺し合いのアクションは理屈抜きに燃える。

そして、カタギの人間の部屋に匿われるシークエンスの緊迫感が実に傑出していて、アクションの連続による単調さを緊張で回避するという悶絶モノの構成。

加えてこの作品を頭ひとつ飛び抜けさせている要因は、マッドドッグと呼ばれるボスの用心棒の存在。

銃を持っているにも関わらず、「こっちのほうがいい」と格闘による闘いを選択する、あまりにも「分かっている」殺し屋なのだ。ちゃんと敵に奪われても大丈夫なように自分の銃のマガジンを外して遊底の弾も取り出す冷静さも熱い。このマッドドッグのキャラがシラットによる格闘アクションに説得力をもたせている。

クライマックスの闘いに至っては、何度も「これは勝てない」と観ている方が焦ってしまうほどで、これはなかなか普通の映画では味わえない感覚。


もちろん幾つかの欠点もある映画であるが、なんといってもターゲットは全世界の中学生であるし、その中学生たちは文句なく次の日から布団相手に特訓し始めることは確実。そんな映画にとって欠点はマイナスにはならないのだ。


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