男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『恋とニュースのつくり方』★★★

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世の中には二種類の映画がある。『軽めのロマコメ』とそれ以外。

『軽めのロマコメ』を観たい時、そういったジャンルの映画は(主にハリウッドには)あふれかえっているので、特に選択に困ることはない。先日はナタリー・ポートマンの『抱きたいカンケイ』を観て、なかなかの満足感を味わったので、引き続き今日は以前から予告編などで気になっていたこちらの作品を観ることにした。例えば『ノーカントリー』とかの映画はソファにキチンと座って観てしまう映画だが、こういったジャンルの映画は寝そべって観ることができる。当然これは差別などではなく、むしろ最近ではこういったジャンルの映画のほうが観ていて楽しいし、満足度も高かったりする。

今回の『恋とニュースのつくり方』も、観終わって大変満足度の高い映画。

マンハッタンのテレビ局に再就職したヒロインが、どん底の低視聴率番組を再建するために孤軍奮闘する。

プロットは当然一行でまとまる。この手の映画の条件としてはこれでOK。

この映画の特徴はハリソン・フォードが出演していること。ハリソンがこの手の映画に出るのは『ワーキング・ガール』ぐらいしか記憶にない。歳をとってさらに辛気臭くなったあの顔面は恐ろしいほどこの手のジャンルに合わないわけだが、今作では「過去の栄光にしがみついた年寄りのジャーナリスト」という役柄なのでドンピシャにハマっている。周りとの協調性が全くない「わがままのサイテー野郎」を、相変わらずの省エネ演技でラクラクとこなしている。これはキャスティングの勝利だろう。ハリソン・フォードは90年代に入って自他共に認めているほど「なんにもしない」役者さんだが、個人的にそういう役者さんは大好きなので、むしろ過小評価されているように思える。こういった役者さんの成否はキャスティング側にかかっているわけで、ハリソン・フォードには何も罪はない。

すぐにテンションが高くなって頑張りまくるヒロインと好対照になっている。

ロマコメというにはロマンチックな要素がほとんど添え物のように扱われているが、予告の段階から「落ち目のワイドショー番組を何とか再建する」というストーリーラインがメインなのは分かっていたので、逆に添え物程度で満足。

ハリソン・フォードと組まされる古株の女性キャスターを演じるダイアン・キートンが、余裕綽々のコメディ芝居を軽妙にみせてくれるのも楽しい。ハリソン・フォードと彼女が組んでいるという事自体が本編同様の化学反応を生み出している。事なかれ主義かと思っていた彼女が、ヒロインのリニューアルプランに大興奮し、率先して体当たりのキャスターに変貌していくのも素直に楽しい。

監督は『ノッティングヒルの恋人』のロジャー・ミッシェル。今回はマンハッタンを明るく楽しく切り取っていて魅力的な画作りになっている。脚本はアライン・ブロッシュ・マッケンナという面倒くさい名前だが、『プラダを着た悪魔』で有名になった人。ヒロインが仕事場で頑張る系のストーリーは共通しているが、他のフィルモグラフィーをみるとそれだけの人ではないようだ。撮影のアルウィン・H・カックラーは『ハンナ』や『サンシャイン2057』とかを手がけていて、まったくこの手の映画は手がけていない。スタジオの裏側や、マンハッタンの陽性の部分をシネスコ構図を見事に活かして切りとっている。音楽はデヴィッド・アーノルドだが、見事なまでに当たり障りのない音楽で、まるっきり耳には残らない。ただ、これは映画音楽としては作品に溶け込んでいるということなので間違いではないだろう。それにしても『ズーランダー』もそうだけど、『ホット・ファズ』や『宇宙人ポール』など、唐突にコメディの音楽もやるから器用だ。


同じような題材だが、こちらはジェームズ・L・ブルックスの作品なので寝そべって観られる映画ではない。そういえば、ブルックスの最新作『幸せの始まりは』は寝そべって見られるのかな。