男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

シネスイチ板橋プログラム2『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー [DVD]
東宝ビデオ (2002-09-21)
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今日は奥さんも一緒に観られる時間だったので、改めて奥さんの要望で観る作品を選びました。

相変わらずビスタサイズですし、この作品はSDであるDVDでしか発売されていません……(ブルーレイは結局発売中止になったまま)

でも、久しぶりに観たくなったのでDVDがどんな感じになるのかと思って鑑賞しました。


上下マスクのビスタサイズにもすっかりなれてしまった

この映画は劇場で観ていていないので(後にスクリーンでは観ています)、基本的にはビデオやLDで何度も観ていたスタンダードサイズが基本として刷り込まれています。ただし、DVDが発売された時に上下マスクをした劇場公開時のビスタサイズに画角が変更されています。まあ、当時すでにハイビジョンの16:9が家庭用テレビでもスタンダードになることは決まっていましたので、この時点でビスタサイズに「戻した」ことは英断だったかもしれません。(厳密に言うとLD-BOXに収録された時にビスタに戻されたと思います)

上下マスクのないスタンダードサイズに慣れていたとはいえ、本来はこの画角で上映される事が前提のため、今となってはほとんど違和感はありませんし、今回大画面で観直してみても、ビスタサイズで画がビシっとしまっている構図も多いです。

有名な喫茶店でのサクラ先生と温泉マークの会話シーン

初見時、僕はこの映画をまったく何の予備知識もなく観たのですが、校長が「学園祭まであと一日ですから……」と不気味に囁くあたりからの不穏な空気は忘れられません。それが頂点に達するのがこのシーン。緑色の透過光が実に素晴らしい。アニメなのに(擬似的とはいえ)360度のパンニングをしながら会話を続けるなどグイグイと映画に引きこまれていったのを覚えています。しかもこのカットにおけるオプチカル処理のトラックアップに蝉の声が大音量でかぶさる演出の素晴らしさよ。

同じくサクラ先生が無邪鬼と初めて遭遇するタクシーのシーン

FIXかと思いきや作画でカメラがフロントガラスを突き抜けて外からのショットに切り替わる傑作カット。外にカメラが出たのに呼応して逆にSEがシーンと消えていく不気味さがたまりません。


「意義なあし!!」

この不味そうなお好み焼き!


ハリヤーでの脱出。ビスタサイズになると限界までパーマたちが下手に寄せてあるのが分かり、画面中央をオプチカルでグイグイ町の全景が遠のいていくのに注意が行く。

これまたビューティフル・ドリーマーを語る上では欠かせないハリヤーでの脱出シーン。異様にダイナミックな演出で町の謎が明らかになる名シーン。星勝の音楽も大スケールでシーンを盛り上げる。動画で動きまくるハリヤーや、背景処理された亀や温泉マークたちが宇宙空間とのシュールな対比で不気味極まる。


日がな一日レオパルドの主砲の射程距離で町の直径を測っている面堂。ビスタサイズになることで主砲と戦車のバランスやすれ違うメガネたちのトラックとの距離感も際立つ。


序説第三章より抜粋

後半の冒頭はメガネ=千葉繁による有名な長口上。このあたりのセリフを空でスラスラ言えるようになるといっぱしのオタク扱いされる。


奥さんとも話していたんですけど、1984年は『マクロス』や『ナウシカ』が同時に公開された有名な年でもありまして、今で言うオタクの持つ口調や仕草などはこのあたりの作品が基準になっているんではないでしょうか。と言うよりもぶっちゃけみんなビューティフル・ドリーマーにハマっていたはずですから、観ているとなんどもムズムズするほどオタク臭いw これはこの作品がオタク臭いのも十二分にあるんですが、これがオタクのイメージを形作っているという気もするのです。

それにしても、押井守が確信犯として納期限界まで粘って誰からも文句を言わせない状況にして作り上げた、独自過ぎる世界観はやっぱり明らかに面白い。観ていて「うお!」と思うようなショットや演出が連発しますし、短期間でテレビと並行して作っていたという切羽詰まった状況が生み出すドライブ感が本当に素晴らしい。そもそも夢をテーマにしておきながら極めて論理的にミステリー調に展開する前半部分や終盤の謎解き部分など、ゾクゾクするほど興奮する。それに加えて時間の芸術である映画をメタ的に取り込んでいる作品の構造自体も凄まじいユニークさだ。

とりあえず早くブルーレイが発売されることを願ってやみません。



今調べたら、DVDが出たのってもう10年前なのか! うううん……

音声解説もピカイチの面白さです。