男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『大統領の陰謀』をブルーレイで観ました。

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久しぶりに観たくなったのでブルーレイで視聴。

広川太一郎野沢那智による鉄壁の吹替版も収録されていますが、カットされているので細かく言語に戻ります。逆に「ああ、ここカットされてたな」と思い出せるので資料的には面白いかも。

ブルーレイになって気づいたのは、有名なワシントン・ポストのセット撮影が落ち着いた雰囲気になっていること。DVDなどでは蛍光灯の光を強く強調するようにコントラストがはっきりとしており、白が眩しいぐらいの映像でした。名手ゴードン・ウィリスがどちらを意識していたかは分かりませんが、こちらのしっとりとした映像も悪くはないです。ツーフィールドフィルターを使い背景の編集者たちの動きや奥のほうまで並んでいる電話にピントを合わせることで編集室の広さを強調している印象的な各ショットもこちらの抑えたコントラストの方が意識にスムーズに入ってくる。意識してしまうのが是か非かはまた別の問題になってしまいますがw
『ゾディアック』でフィンチャーが思いっきり意識しているのがよく分かります。

取材の様子とそれに至る経緯に絞ったルポタージュ風の構成は後の映画に大きく影響を与えていますし、単純にカッコイイ。加えてハル・ホルブルック演じるディープ・スロートの存在などをキチンと娯楽色豊かに入れ込んでいるウィリアム・ゴールドマンのシナリオも傑作。

密会場所の地下駐車場の「暗黒」表現が抜群にいいんだよなあ。極端に奥が暗くて、そこから足音を先行させてロバート・レッドフォードが現れたりするカットは悶絶モノ。

ああいうカットは黒浮きが欠点とされる透過型液晶ではどうなるのか早く試してみたい(灰色になっちゃうと台無しなんだけどなあ……)。

それにしても脂ののっている頃のダスティン・ホフマンは最高ですね。メモが無くてナプキンなどに殴り書いたものを服のあらゆるポケットから次々と出すシーンなんか素晴らしいよ。一挙一動にベテランっぽさが漂う序盤の登場シーンも最高。

電話を使った演出も実に燃えで、次々と取材対象に電話をかけながら懸命にメモを取る同時進行感覚は映画ならではだし、奥から別の内線にかかってきて次々と切り替えていくとか、電話が切れるとメモをし続けながら受話器を首から落とすとか、もうカッコ良すぎです。

ああいう要するに「段取り」が緻密に描かれている映画ってのは傑作なんですよ。勿論描かれているものが優れていることは前提として、作品の善し悪しとか好き嫌いってのはそういう「どう描かれているか」に尽きるわけで。そういう意味でもこの映画はボクの超好みなんですよね。「陰謀」とか「大統領」とか実際にはあんまり関係なくて、「取材」にどんどん取り込まれていく二人を描いている「取材映画」として傑作なんですよ。

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デヴィッド・フィンチャーが『大統領の陰謀』の影響下で作り上げた傑作。この作品も『ゾディアック』事件という題材をフックとして主人公たちが事件の取材(捜査)にどんどんのめり込んでいく様子を徹底的に描いた「取材映画」だ。『セブン』を期待していた観客からはそっぽを向かれてしまっているようだけど、この映画は傑作。


原作通りだから仕方ないとはいえ、回想形式でなければもっと素晴らしかったと思える傑作。いや、このままでもむちゃくちゃ面白いんですけど、やっぱりちょっと現在のシークエンスはめんどくさい。こちらの新聞社も『大統領の陰謀』を意識していると原田監督が音声解説で語っていました。