男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『コンテイジョン』★★★1/2

「その過程」映画の傑作

恐らく『ゾンビ』が最初だと思うんですけど、文明が崩壊する作品に強く惹かれます。そして、これが個人的な嗜好としてではなく、古今東西ありとあらゆる「文明崩壊」作品が無数にあることからも、人類は大なり小なりそういう作品に惹かれる傾向があるんではないでしょうか。

ゾンビ 米国劇場公開版 ニューマスター&ワイドバージョン [DVD]
Happinet(SB)(D) (2010-11-04)
売り上げランキング: 49423

そういったジャンルの作品は大きく「崩壊直前」「崩壊中」「崩壊後」に区分できますが、まさにロメロのゾンビ・サーガである『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』『ゾンビ』『死霊のえじき』がそれぞれに当てはまると思います。

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド [Blu-ray]
Happinet(SB)(D) (2010-10-02)
売り上げランキング: 36654

作品の傾向としては『崩壊後』の世界を描くものが多いようですが、『ゾンビ』のリメイクである『ドーン・オブ・ザ・デッド』の冒頭10分の素晴らしさを例に出すまでもなく、「その日」が描かれるというのは何ともいえない甘美な魅力に満ちており、本当にこんな事を言ってはいけないんですが、僕自身「9.11」や先日の震災の時など、そういう負の高揚感が脳の一部を支配していたのは疑いようがありません。



話が逸れました。

そういう「世界崩壊の序曲」を描く場合に近年もっともリアリティを持っているのが、今回の『コンテイジョン』で取り上げられたパンデミック

この作品ではウイルスの特徴として「潜伏期間の極端な短さ」「症状が風邪の超ひどい感じ」という二点が非常に素晴らしい。「潜伏期間の短さ」はストーリーの展開を強烈なスピードに押しあげていますし、「これはまずい」というこの手の作品の肝である絶望感がヒシヒシと伝わってきます。そして、感染したあとの症状に誰でも経験がある「風邪」を持ってきたのも素晴らしい。それの死んでしまうバージョンですから、生々しすぎます。

ソダーバーグ監督らしく、全体的な演出はことさら煽るような大げさな演出はなく、猛威をふるうウイルスによって急速に文明と社会が危機に陥っていく様子を描いていく。それでいて全体的な俯瞰図で語るのではなく、あくまでもそれに関わった多数の「個人」をタペストリーのように描いていく手法が大変好みに合致しました。一番好きなのは『トゥモロー・ワールド』で用いられた「完全一人称視点」なんですが、あちらとは真逆のアプローチをとることで観客そのものが「体感」するのではなく「関与できない俯瞰」の立場に追い込まれる焦燥感を作り出しています。

これはある意味、今回の震災や9.11などの「テレビの向こうのカタストロフィ」という「負の快感」に対するソダーバーグ流のアプローチなのかもしれませんね。


もう一点どうしても外せないのはグウィネス・パルトローの使い方。とにかく最高でした。

著名な女優がいきなり死んじゃうという一発ネタのためのゲスト出演かと思いきや、感染源特定のための回想映像や、死んでからも色んな見せ場がてんこ盛りで、かなり美味しい役どころでした。一見すると「美人なの?」と思わせて、キチンとお化粧したり着飾ると途端にすごく魅力的になる不思議な特徴も随所に発揮されていて、抜群にうまいキャスティングなんじゃないでしょうか。

まあ、お陰で「有名な役者がいきなり死んじゃう」という、いわゆる一つのスペイシー・ショックとしての役はケイト・ウィンスレットに回されてしまい。あちらはちょっと損な役回りだったかも。ははは。

ローレンス・フィッシュバーンがちゃんと聡明に見えるだけでもソダーバーグ監督の演出力は確かだとわかりますけどね。

ああ、嬉々としてクソ野郎を演じているジュード・ロウも最高でしたと付け加えておきます。あれも良いキャスティングでした。


「天気も良いしちょっとドシリアスな映画みてええなあ」という人にはうってつけの一品です。


崩壊後映画の傑作。


宇宙戦争 スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン (2010-09-16)
売り上げランキング: 8851

ポスト9.11映画の最高峰。


ウォーキング・デッド
ロバート・カークマン
飛鳥新社
売り上げランキング: 4802

今もっとも「熱い」崩壊後作品。続刊も2月に発売決定!