男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『チェイサー』★★★1/2


チェイサー ディレクターズ・エディション【初回限定生産2枚組】 [DVD]
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延々緊迫感が続く圧巻のホラー・サスペンス

噂には聞いていたのですが、これほど傑作だとは正直思っていませんでした。韓国映画には何度も煮え湯を飲まされてきましたが、稀に「本物」の傑作に出会えるから驚きます。まあ、映画の良し悪しに国なんて関係ないんですが。

とまれ、冒頭の『タクシー・ドライバー』のラストカットみたいな映像から延々目が放せず、常に緊張感と恐怖が全編を貫いています。

駐められた車がディゾルブして放置自動車と化している序盤から実に「巧い」。小道具の使い方から、もっとも肝心な”犯行現場”まで、すべてが常に観客に明示されていることから生まれるサスペンスが絶品。そもそも最初の30分がすでに一本分の映画として成り立つほどのストーリーとサスペンスが充満しているのに、そこから展開する「まったく予測がつかない」ストーリーと、「犯人が目の前にいる」事によって生じる異様な「もどかしさ」がべらぼうに緊張させる。

プロット自体が極めてシンプルな点も特筆モノ。

デリバリーヘルスの経営者で元刑事の主人公が、失踪してしまったヘルス嬢にかかってきた電話が同じ事に気づき、そこへ赴いたらバッタリ犯人に遭遇。捕まえてみたらそいつは連続殺人鬼だと供述するが証拠が不十分。拘留時間内に証拠を見つけ出すことに奔走する警察と、まだ生きている可能性のあるヘルス嬢の行方を追い求める主人公。

観ている方が「頼むから早く!」と、ずっと思わせる事に終始している仕掛けが散りばめられており、しかもそれが幾重にも重なって使い捨てにならない。すべてのサスペンスは執拗に積み重なっていき、まったく「遠慮ない展開」になだれ込んでいく。

とにかく圧巻としかいいようのないサスペンス映画。


そして、連続殺人鬼の造型と演じるハ・ジョンユが実に素晴らしい。本当に「快楽殺人者」という感じがするのと、彼と対峙するいくつかの場面に漂う「殺される……」感はただごとじゃない。やっぱり凶器がノミとカナヅチってのがいいんでしょうね。あのどこにでもある工具ってのが実に背筋が凍る恐怖を生み出している。このキャラクターの存在がこの映画をホラー映画としても出色の出来にしている。


必見。


・・・


WOWOW放送版。HDクオリティは非常に高く、夜のシーンにおける湿気や密集した住宅街を緻密に描画しています。ぜひブルーレイ化してほしい。